研究課題/領域番号 |
21K08836
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
角浜 孝行 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (30360986)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胸部大動脈手術 / 脊髄障害 / 神経特異エノラーゼ |
研究実績の概要 |
高齢化社会に伴い、大動脈疾患による手術数は増加傾向を示しかつ胸部大動脈瘤手術患者平均年齢は、76.2(54-89)歳と高齢者が多い。手術手技の改善によって手術死亡率は改善したが、手術特有の合併症である脊髄障害が問題となっている。神経特異的エノラーゼ(NSE)は、解糖系酵素のひとつで、心臓大血管外科領域での手術後の脳血管障害の予測因子になり得ることを示したが、これを術後脊髄障害早期発見につながる予測因子として応用できないかと言うことが本研究の目的である。 令和3年度は、血清・髄液のNSE値の経時的推移を検討した。 15例の胸部大動脈ステントグラフト内挿術施行患者の検体を採取して解析を行った。血清NSE値は、術翌日にピークとなり術後5~7日で術前値まで低下する傾向が見られた。大量に輸血が必要だった一例は、脳血管イベントが見られなかったにもかかわらず、血清NSE値の上昇が見られたが、人工心肺使用時と同様に溶血の影響があると思われ、輸血施行例での絶対値の評価については注意が必要と思われた。データの蓄積が必要である。今回のシリーズでは、術後対麻痺となった症例はなかったが、一過性の脊髄障害を認めた症例が2例認めた。脊髄障害有無によるNSEピーク値は、脊髄障害無 18.3±5.7に対して脊髄障害有23.3±1.8と高い傾向を示しており、一過性の障害であってもNSE値が有意に上昇し、脊髄障害の予測因子となる可能性が示唆された。一方、脳脊髄液は採取可能だったのは2例のみだったため今年度以降の症例の蓄積が必要である。また、重症度との関連性や予後判定についても合併症の発生頻度が少ないため現段階では不明であり今後の検討課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度において、術後NSE値が術直後から術翌日にかけてピークを呈し、その後漸減することが判明した。また、一過性脊髄障害を呈した症例ではNSEのピーク値が高い傾向にあり症例の積み重ねによって統計学的有意差を示す可能性が期待できる。 胸部大動脈ステントグラフト術の症例はある程度確保できているが、胸腹部大動脈置換術の症例は少ないことからサンプルの確保にもう少し時間が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
さらに症例を蓄積して、NSEのピーク値の変化と脊髄障害との関連性を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、国内外の学会への参加が著しく制限され研究促進のための情報収集活動がほんどなされなかったために次年度使用額が生じてしまった。 今年度は、感染状況を鑑みつつ学会・研究会への参加を行っていきたい。
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