研究課題/領域番号 |
21K08839
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川井 陽平 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (80802347)
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研究分担者 |
古森 公浩 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (40225587)
坂野 比呂志 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (80584721)
児玉 章朗 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (10528748)
杉本 昌之 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (00447814)
新美 清章 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (50467312)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ロイコトリエン-リポキシゲナーゼ系代謝物 / 動脈瘤 / 血管病 |
研究実績の概要 |
ロイコトリエン-リポキシゲナーゼ系代謝物がマクロファージに作用することで炎症性作用を惹起し、動脈硬化の進展に寄与していることが報告されている。目的は、ロイコトリエン-リポキシゲナーゼ代謝系を抑制する薬物の血管病に関連する抗炎症作用に関して検討し、血管疾患に対する新たな治療戦略を提唱することにある。方法:マウスマクロファージを培養後、matrix metalloproteases(MMPs)やcytokinesの発現を誘導するためTNF-αで刺激した。その後、モンテルカストを含む培地を添加し、マクロファージからmRNAを抽出し、逆転写酵素にてcDNAを生成した後qPCRを用いて遺伝子発現解析を行った。添加濃度は投与なし(control)、2μM、20μMで行った。qPCR時にはGAPDH,TNF-α,interleukin(IL)-1b,NF-κB,monocyte chemotactic protein(MCP)-1を使用した。GAPDH当たりの相対的発現量を比較することで評価した。結果:IL-1b (control vs 2μM vs 20μM; 1.37 vs 1.27 vs 0.56)、NF-κB (control vs 2μM vs 20μM; 0.97 vs 0.94 vs 0.68)であり、これらはcontrolに対して20μMで有意に遺伝子発現が抑制された(p<0.05)。MCP-1 (control vs 2μM vs 20μM; 0.9 vs 0.9 vs 0.8)とTNF-α (control vs 2μM vs 20μM; 27.9 vs 31.1 vs 25.8)では有意差を認めなかった。結論:In vitroでは、モンテルカスト投与でIL-1b, NF-κBの遺伝子発現は有意に抑制され、マクロファージに対する抗炎症効果を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ロイコトリエン-リポキシゲナーゼ代謝系を抑制する薬物であるモンテルカストの投与により、まずin vitroにおいて動脈瘤形成や動脈硬化に関与するとされるIL-1b, NF-κBの遺伝子発現が有意に抑制されたことを示すことができた。実験動物モデル(マウス腹部大動脈瘤モデル、poor run offモデル、ステント留置モデル)に対するロイコトリエン-リポキシゲナーゼ代謝系を抑制する薬物の効果に関する検討については開始されていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後、エラスチンを主成分とする弾性繊維などの細胞外マトリクスの分解を促進するmatrix metalloproteinase (MMP)-2及びMMP-9やその他の炎症性メディエーターなどに対するロイコトリエン-リポキシゲナーゼ代謝系を抑制する薬物の効果を調べる必要があり、さらには動物モデルを使用して大動脈瘤拡大抑制効果や内膜肥厚抑制効果などを調べる実験が必要と考えられた。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症により学会出張が減り、当初予定していた使用額に誤差が生じたため、残額分を旅費・物品費として使用予定である。
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