研究実績の概要 |
本研究は、補助人工心臓患者のDriveleine感染に対する近赤外線照射の有用性を、実験小動物を用いて検討するものである。本実験は、雄Sprague-Dawleyラット14週齢を用いた。全身麻酔下に背部に皮膚および皮下組織を全層欠損する直径1cmの創部を作成、創部作成後2日目に創傷治癒過程で肉芽が生成された時点をドライブライン貫通部と想定した。 ラット背部に創部を4つ作成、複数の条件(照射出力0-80%、照射時間5s-30s)で近赤外線照射を行い、近赤外線照射後の標本摘出のタイミングを照射直後、1日後、3日後、7日後に設定し、皮膚および皮下組織の変化を病理学的に評価した。その結果、近赤外線照射 後の皮下組織では膠原繊維が変性しており、照射出力や照射時間に比例するようにより深達度が大きくなることが確認された。また現在照射を行った条件では腹腔内臓器に影響がないことも確認された。一方で一定以上の照射出力や照射時間では組織の炭化や組織内空気の爆発といった有害事象が発生することも確認された。さらに一定以上の照射出力や照射時間では創傷治癒が遅延することも確認された。これらの結果から、有害事象なく十分な効果の得られる照射条件は照射出力10-25%、照射時間10-20secであることが明らかになった。 また、現在日本国内に装着患者が存在する5機種(HeartMateⅡ,HeartMate3,Jarvik2000,EVAHEART,HVAD)のドライブラインを入手し、上記条件で近赤外線照射を行い、実体顕微鏡にて観察、Driveline内部に熱損傷が及ばないことを確認した。 以上の結果から、照射出力10-25%、照射時間10-20secで近赤外線照射を行うことが、Driveleine感染の治療に有用である可能性が示唆された。
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