研究課題/領域番号 |
21K08858
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
田中 宏樹 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (50456563)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 大動脈瘤 / 壁在血栓 |
研究実績の概要 |
腹部大動脈瘤(AAA)の進展(瘤径拡大と破裂)と壁在血栓の大きさに相関するが、その病態意義および形成機序の詳細は不明である。 本研究ではAAA壁在血栓の形成機序を“線溶機構の異常”という観点から解析するが、当年度は術中に採取されたヒトAAA組織(血管壁と壁在血栓)の線溶系分子の局在を病理組織学的に解析した。AAAの血栓形成機序は、凝固線溶系に基づき制御されている。線溶機構の異常に着目し、壁在血栓の形成に関与する線溶分子を同定する。 これまでの研究成果から推察される候補分子として、フィブリンに溶解抵抗性を付与する線溶系の阻害因子である thrombin activatable fibrinolysis inhibitor (TAFI) 関連因子の局在を確認した。TAFI は thrombomodulin (TM) 結合トロンビンにより活性化され、plasminogen の結合とその活性化に必須のフィブリン C 末端リジンを切除し線溶を阻害する。壁在血栓中のフィブリン、TAFI、TM、plasminogen の局在を確認する。同様に plasminogen activators (PAs) の特異インヒビターである plasminogen activator inhibitor type 1 (PAI-1) の局在を確認した。 免疫組織化学染色で検証した。いずれの壁在血栓も層構造をなしていた。大動脈内腔側にTAFIが局在していることが分かったが、TM、plasminogen、PAI-Iは血栓全体に散在しており、さらに詳細な検証が必要と思われた。走査型電子顕微鏡では、器質化した血栓の血管壁側においても、血液流入のある部位が観察された。免疫組織化学染色の切片と比較検討したところ、組織採取の際に混入したのではなく、血栓の一部が力学的な影響か、組織線溶かは不明だが、裂溝のような構造から血液流入のあったことが分かった。今後、壁在血栓の進展が大動脈瘤破裂に関与する可能性のある重要な現象の発見と思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
局在の有意性を統計学的な処理方法について検討が必要。
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今後の研究の推進方策 |
線溶系因子欠損マウスにAAAモデル動物を作製し、壁在血栓の変化を観察する。線溶系の異常から、壁在血栓形成を助長すると考えている分子としてTAFI欠損およびPAI-1欠損マウスを用いてAAAモデル動物を作製し、血栓形成への影響と瘤径や病理組織変化を解析する。解析項目は、超音波検査により、術前、術後1日、3日、7日、14日、28日に大動脈径を測定する。また、破裂時、及び術後28日時に犠牲死させ、病理組織学的解析を実施し、血栓形成、中膜弾性線維の変化と炎症反応等について半定量する。
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