研究課題/領域番号 |
21K08861
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村田 梢 京都大学, 医学研究科, 助教 (80884329)
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研究分担者 |
田中 陽 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (40532271)
升本 英利 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (70645754)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 心臓 / 心毒性 / Organ-on-a-chip / 創薬研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、我々が独自に開発したHMDの安定性を高め、より精度と感度の高い新規医薬品の心毒性評価方法を確立させることである。本年度はHMDシステム改良・デバイス装着システムの開発を行った。現システムでは心臓組織シートを直接デバイス上へ接着させているが、この時の接着度の差が測定結果へ影響を与えることが懸念された。そこでSCAD-MTTM(SCAD社)と共同研究計画を締結し、細胞接着性ファイバー技術を改良したデバイス装着システムへと改良した。このシステムでは心臓細胞が簡易にそして安定してデバイス上に移動・装着できる。この新システム(SCADフレーム)では、構造上、心臓組織シートとデバイスとの接着度を危惧する必要はない。また測定自体の操作性やハイスループット性を著しく向上させている。さらにSCADフレーム上には細胞組織シートにみられる血管網様構造が構築されていた。本年度は加えてHMD本体の改良も行い、SCADフレームへの物理的なダメージを軽減するような構造へ一部変更した。 このシステムを用いて、現在一般的な心作用薬の挙動を再現できるか検討している。今後は既知の心毒性を示す薬剤への応答性を検討いくとともに、心毒性が未知の化合物ライブラリを用いた心毒性検出実験を行い、HMDによる新規化合物における心毒性検出能力を実証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、HMDシステムの改良および装着デバイスの改良の点において大きく進展し、安定性とハイスループット性の向上を達成できた。さらにこのシステム用いた実際の薬剤応答の評価も開始した。一方で、iPS細胞由来の心臓組織の未成熟性という、成体心臓組織に対する心毒性を評価するうえで解決すべき課題は残されている。今回の改良した装着デバイスはその構造的特性から高い配向性が期待でき、それがより成体心臓組織の特性に近いことから、iPS細胞由来の心臓組織シートの未成熟の克服に寄与することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、一般的な心作用薬の挙動を確認すると主に、既知の心毒性を示す薬剤や市場撤退医薬品の心毒性検出実験を実施し、心毒性を安定して検出できるかを評価する。また、同時にモーションベクターによる画像からの定量化でも拍動を評価し、HMDがより高感度、高精度で心毒性を検出できることを実証する。続いて、FDA 承認薬ライブラリ(コスモバイオ社)などの入手しうる化合物ライブラリを用いて、心毒性が未知の化合物における心毒性をスクリーニング的に評価し、HMDによる新規化合物における心毒性検出能力を実証する。さらに、ヒト成体心臓により近い機能をもたせ、心毒性検討結果の外挿性を向上させるために、脂肪酸投与、動的流水培養、電気刺激、水圧刺激といった化学的、物理的な刺激による心臓組織の成熟化も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者(理化学研究所:升本)の分担分159410円を次年度へ繰り越す。繰越金は培養関連試薬の購入に使用する。
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