研究課題/領域番号 |
21K08871
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
安田 尚美 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40722385)
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研究分担者 |
佐々木 祐典 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (20538136)
川原田 修義 札幌医科大学, 医学部, 教授 (30325865)
本望 修 札幌医科大学, 医学部, 教授 (90285007)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 虚血性脊髄障害 / 骨髄間葉系幹細胞 / 神経再生 / 神経保護 / 大動脈瘤 / 慢性期 |
研究実績の概要 |
虚血性脊髄障害は胸部・胸腹部大動脈瘤の外科治療における非常に重篤な合併症であり、様々な予防法が行われているが、発症頻度も10~20%と高く、根本治療法は無い。我々は、急性期虚血性脊髄障害モデルに対する骨髄間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells: MSCs)の経静脈的投与の治療効果を報告した。しかしながら、実臨床においては術後リハビリテーショ ンを継続している慢性期虚血性脊髄障害患者が多く存在している。また、外傷性脊髄損傷に関しては、急性期に加えて、既に慢性期においてもMSCの経静脈的投与によって運動機能の回復効果を報告している。今回、我々は慢性期虚血性脊髄障害モデルを用いてMSCの経静脈的投与が治療効果をもたらすかどうかを検証する。 本研究では、急性期虚血性脊髄障害モデル同様に慢性期においても外科的にラットを用いて作製できる虚血性脊髄障害モデルがないためモデルの作製から開始した。ラットを使用し全身麻酔下で左開胸を行い下行大動脈を遮断することで脊髄虚血を誘導した。急性期虚血性脊髄障害モデルよりもさらに長期の生存期間が必要になるため、急性期モデルのプロトコールを踏まえて、遮断部位や遮断時間、酸素投与量や体温等の術中管理を再調整し、下肢の運動障害を残しつつも長期に生存できるモデルの確立を行った。また観察期間中に感染などの合併症が起こらないように術後管理方法も再検討した。この1年ではモデル作成プロトコールの調整を行い安定したモデル作製が可能となった。また、3か月以上の経過観察において虚血性脊髄障害モデルラットの後肢運動麻痺は継続して認められていた。MSCを投与した群においては後肢の運動機能が回復する傾向を認めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当施設の動物実験施設の移転に伴い、一定期間動物実験ができない期間があったこと、および研究責任者がCOVID感染症の対応を行っており、十分な研究時間を確保できない状況があったため。
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今後の研究の推進方策 |
モデル作製プロトコールが確立したため、モデル数を増やしMSC投与による運動機能の回復を確認する。観察期間が終了したのち脊髄標本を採取し、各種組織染色や免疫染色。電子顕微鏡による組織解析、MRIを使用した画像的解析を施行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当院の動物実験施設部の移転に伴い一定期間実験ができなかったことに加え、研究責任者がCOVID感染症へ対応しなければならない状況があり、十分な研究時間を確保できなかったため。予定より実験計画が遅れたため次年度への繰り越しが発生した。当初計画ではモデル作製プロトコールが安定すれば組織学的検討を開始する予定あった。モデル作製のプロトコールが確立したため、次年度は虚血性脊髄障害モデルの詳細な自然史の検討に加え、MSCの治療効果の検証を行う。治療メカニズムの解析を組織学的および画像的解析によって行っていく予定である。
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