研究課題/領域番号 |
21K08876
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加藤 達哉 北海道大学, 大学病院, 教授 (20624232)
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研究分担者 |
櫻井 遊 東北大学, 薬学研究科, 講師 (00707234)
畑中 佳奈子 北海道大学, 大学病院, 特任講師 (10399834)
小川 美香子 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (20344351)
樋田 泰浩 藤田医科大学, 医学部, 教授 (30399919)
畑中 豊 北海道大学, 大学病院, 特任准教授 (30589924)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 光免疫療法 / がん糖鎖抗原 |
研究実績の概要 |
本研究はMUC1がん特異的糖鎖抗原を選択的に認識するMUC1-Tn抗体と光感受性物質IR700との結合体を用い、光免疫療法(Photoimmunotherapy, PIT)による新規肺がん治療法の開発を目指すものである。 まず昨年度までの実験で予想以上に近赤外光の照射エネルギーが必要であったことを鑑み、一抗体当たりのIR700の結合量を可及的に増加させる試みを行った。MUC1-Tn抗体とIR700結合体を1:5から1:10の割合へ増量することで、一抗体当たりIR700がこれまで3.8分子程度から6.1分子まで増加できることを確認した。この新しいMUC1-Tn-IR700複合体を用いて次の検討を行ったが、複合体添加1時間後、6時間後ではイメージングで集積が確認できず、24時間だと細胞内に内在化されていた。また、添加後24時間では、顕微鏡レベルではPIT効果を認めるものの、FACSではPIT効果が認められず、原因としてIR700が内在化されてしまうとNIR-PITの効果は減弱してしまう可能性を考えた。そこでIR700添加後のincubation timeの至適時間を検討した。PIT施行前の2時間から1時間ごとにイメージングしたところ4時間からイメージングされることがわかった。本結果をもとに治療効果を評価したが、予想に反しPITの効果に明らかなtime-dependentな差を認めなかった。また、さらにFACSを用いてPI stained cellの割合を検討したが、4時間と24時間では同じくPIT効果に差は認められなかった。MTTアッセイでもdose-dependentにcell viabilityの低下が認められたものの、予想以上の照射エネルギーが必要であったことから、MUC1-Tnはがん細胞特異性はかなり高いものの、総発現量は想像以上に低いことが原因と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
同時に新しいSN102-IR700結合体でT47D細胞を用いてマウス皮下腫瘍を作成した。n=5程度でPITを行い、腫瘍径+生存曲線の評価をする予定であったが、予想に反して腫瘍の非常に増殖が非常に遅く、腫瘍を作成するのに時間を費やした。マトリゲルの量を調整して再度トライするも同様の所見で、細胞自体の問題と考え、ストックより起こし直そうと考えていたところ、残念ながらラボで液体窒素切れのためストック細胞が全滅してしまう事件があり、細胞を購入して実験をやり直しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、抗体の内在化の阻害(細胞膜に維持)に関して検討する。 同時に新しい細胞株で皮下腫瘍を作成、PIT施行後に免疫染色等を行い、MUC1-Tn抗体の腫瘍内分布等の検討を進めていく。さらに長期観察群を作成し、腫瘍径の経時的観察・予後 (生存曲線)を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今後新たな細胞株を揃えて、さらなるin vivo施行するのに際し、抗体-IR700複合体の生成、細胞培養関連、消耗品として助成金が必要である。また、in vivo実験に伴いマウスの購入代、治療効果判定としての免疫染色等の物品費が必要なため今年度未使用額を来年度に全て繰り越したい。
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