研究課題
早期移植肺機能不全(PGD)は、障害肺の移植術直後に生じ、肺移植を受けた患者(レシピエント)の予後を左右する重要なリスク因子であり、現状では体外式膜型人工肺(ECMO)などの保存的加療が基本となっている。本研究ではレシピエント体内でPGDを早期治療するIn vivo lung perfusion法(IVLP)を考案し、その有用性を検討した。実験はブタ左肺移植PGDモデルを使用して行った。1.無治療群、2.ECMO治療群、3.IVLP治療群の3群に分け、PGD発症後2時間の治療介入を実施し、治療後4時間の移植肺機能の推移を比較した。結果として治療直後からIVLP群で移植肺の酸素化能改善を認め、その傾向は治療後4時間の経過中も保たれた。また、病理学的lung injury score、肺コンプライアンス等でもIVLP群では他の群よりも良好な回復を示す結果を得た。短時間のIVLPにより、移植後早期にPGDの改善が得られる可能性が示された。本研究は移植前にグラフトの機能評価や治療を行うEx vivo lung perfusion (EVLP)の技術をレシピエント体内に応用したIVLPによってPGDの新規治療戦略としての有用性を検討するものである。移植術前にPGD発症を防ぐ戦略として臨床応用されている数少ない技術の一つである一方、高コスト、適応基準に関する基準がなく過剰適応となる可能性があるなどの問題があった。これに対して、IVLPは移植後にPGDが実際に発症した後に治療介入するものであり、必要症例にのみ適応できる利点を有している。本法は、臓器の安全な有効活用に寄与する手段としてEVLPの役割を補完する新規の強力な治療戦略となりうると考えられる。
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The Journal of Heart and Lung Transplantation
巻: 43 ページ: 284~292
10.1016/j.healun.2023.10.011