研究課題/領域番号 |
21K08891
|
研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
羽藤 泰 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (10365281)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | がん / 微小環境 / 肺癌 / 血管内皮細胞 / がん免疫セットポイント |
研究実績の概要 |
腫瘍血管内皮細胞の抗腫瘍免疫制御機構の解析を行っている。初年度にin vivo実験を行い、抗VEGFR2治療による抗腫瘍免疫応答の改変を確認し、二年目以降にin vitro実験でメカニズムを明らかとする計画である。 本年度は、計画に従って、in vitroのモデルを中心に実験を実施した。C57BL/6Jマウスで作成したExLLC由来腫瘍を摘出し、単一細胞に分けたあと、これをスフェロイド培養に供した。血管内皮細胞をCD31磁気ビーズを用いて除去するものと、しないものに分け、通常大気と低酸素(1%O2)に分けて3日間培養を実施した。本研究ではVEGFR2の免疫制御スイッチとしての機構を解析するため、培養上清に抗VEGFR2抗体を添加し、培養上清でのINF-γ、IL-2発現をELSIAで定量し、腫瘍及び間質細胞でのPD-L1発現強度を免疫染色で定量した。低酸素下では単純なスフェロイド培養においては、IFN-γおよびIL-2の培養上清内での発現量は通常大気下での培養に比べてわずかに低下が見られたが統計学的な有意差には至らなかった。一方で、抗VEGFR2抗体を上清に添加し、低酸素下で同培養を実施すると、IFN-γ発現量はほぼ倍増し、IL-2発現も上昇する傾向が認められた。CD31ビーズを用いて血管内皮細胞を除去すると、VEGFR2由来のIFN-γ及びIL-2発現の上昇は観察されなかったことから、低酸素化での免疫応答活性が腫瘍血管内皮細胞由来のメカニズムであることが示された。 途中経過は得られているが、学会発表および論文などでの成果発表には至らなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1年目の終了時点で、動物モデルを2系統の癌細胞株で実施する予定であったが、1系統(ExLLC)のみでしか実験が完遂できなかった。本年はその持ち越し分としてE0771乳癌細胞株を用いて検証する計画であったが、in vitroの実験で手一杯になってしまい、手つかずになってしまった。
|
今後の研究の推進方策 |
残りの期間でE0771を用いた乳癌モデルで、同様の結果が観察されることを証明したい。 また、in vitroの実験で仮説で予測した血管内皮細胞による抗腫瘍免疫制御機構の存在を確認できたものの、メカニズムに踏み込めていない。血管内皮細胞内で低酸素+抗VEGFR2抗体添加後に起きている遺伝子発現パターンの改変状況をRNAseqなどを用いて解析していく必要があり、次年度の目標としたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年実施したin vitro実験で、仮説の通りの現象が確認された。一方で、メカニズム解析が不完全な状態までで期間が終了してしまった。当初の計画では3年目は不足データの補完を目的としていたので、額の見積もりがもともと少なく、このままでは実験の完遂が不可能になる懸念があったので、次年度使用額が発生した。 次年度については、in vitroのorganoidモデルでの血管内皮細胞についてのRNAseq解析と、EO771乳癌細胞株モデルでの追認実験を計画している。
|