BRAFは、EGFR、ALK、ROS1fusion、RET fusionなどと同様に肺癌の重要なドライバー遺伝子である。最も多いBRAF変異はV600E(41%)であるが、K601E、D594G、G469Aなど他のnon-V600E変異も多く検出されている。本邦においてはBRAF V600E 陽性肺癌に対して、BRAF阻害剤: ダブラフェニブとMEK阻害剤:トラメチニブ併用療法の有効性が報告され、2018年3月に国内承認されている。一方で、BRAF non-V600E変異を持つ肺癌に対する治療法は未確立である。non-V600E変異は、さらに野生型BRAFと二量体を形成し、下流シグナルを活性化できる活性中間型、そして野生型CRAFと二量体を形成し、弱い活性を誘導する不活型に大別される。 これまでの結果から、2種のBRAF阻害剤: ダブラフェニブ、エンコラフェニブ、そしてMEK阻害剤:トラメチニブ、ビニメチニブは、活性中間型BRAF G469Aを持つ肺腺癌株: H1395、H1775、そして不活化型BRAF G469Aを持つ肺腺癌株: H1666に対し、いずれもBRAF V600Eをもつ肺腺癌株: HCC364に比べ低い抗腫瘍効果を誘導した。また不活化型を持つH1666に対しては、トラメチニブが感受性を示したのみで、他の3剤へは抵抗性が見られた。上記薬剤の併用効果の検討において、BRAF阻害剤:エンコラフェニブとMEK阻害剤:トラメチニブ、さらにトラメチニブとEGFR阻害剤:セツキシマブの併用はH1775およびH1666に対し、それぞれの単独より強い抗腫瘍効果を誘導した。またこの効果は、活性中間型BRAF G469Aを持つ肺腺癌オルガノイドPDT-LUAD#5においても確認された。
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