前年度に施行したNGS解析の結果を用いて、遺伝子変異のクラスター解析を行い、他臓器癌と肺腫瘍の遺伝子変異パターンを統計学的に比較検討した。42症例において、遺伝子変異パターンの一致、不一致により、原発性肺癌(7症例)または転移性肺腫瘍(35症例)と診断可能であった。 本年度は、末梢血、および、手術検体の肺静脈血を検体として、Prognostic markerとしてのctDNAの意義を検証した。原発巣・転移巣と相同のmutationが血中に認められれば、ctDNAと判定した。原発性肺癌7症例中、4例でctDNAが検出され、肺静脈血中ctDNAは末梢血の約2倍のallele fraction (AF)を示し、全4例がこの濃度勾配(肺静脈血>末梢血)を示した。一方、肺転移症例35例では、9例でctDNAが検出され、肺静脈血と末梢血とでctDNAの特徴的な濃度勾配を認めなかった。さらに、これらctDNAが検出された症例では、術後予後が有意に不良であり、ctDNAのprognostic markerとしての意義が示された。 さらに、今回、多発肺癌に対して手術を施行後に再発を認めた16症例を対象とし、再発時患者plasma中のctDNAの次世代シーケンサー解析により原発巣の同定を試み、その有効性、妥当性を検討した。再発時の患者plasma中のctDNAを解析し、FFPE検体との遺伝子学的一致、不一致をクラスター解析により統計学的に検証した。全16症例で、遺伝子変異パターンの一致、不一致により、原発巣が同定された。病理組織診で原発巣が同定されていた7症例において、遺伝子学的診断との一致率は100%であった(7/7)。それ以外の9症例において、臨床診断と遺伝子学的診断との不一致率は33.3%(3/9)であった。以上より、多発肺癌の再発時においても、ctDNAの遺伝子変異との一致性を検討することで、原発巣の正確な同定が可能となることが示された。
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