研究課題/領域番号 |
21K08897
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡辺 有為 東北大学, 大学病院, 助教 (20724199)
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研究分担者 |
田中 遼太 東北大学, 大学病院, 特任助手 (40647450)
渡邉 龍秋 東北大学, 大学病院, 助教 (70636034)
新井川 弘道 東北大学, 大学病院, 講師 (80636027)
岡田 克典 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (90323104)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肺移植 / 肺葉移植 / マージナルドナー / 局所呼吸機能 / 移植適応評価 |
研究実績の概要 |
ドナー肺葉ごとの移植適応評価を確立するために大動物モデルを用いて研究を行った. ①ブタ肺葉移植モデルの確立:ドナーとして体重45 kgのヨークシャー種家畜ブタを用いた.全身麻酔下に肺動脈本幹より灌流用カニューレを挿入し,4℃に冷却した肺保存液にて両肺を灌流,冷却し,両肺および心臓を一塊に摘出した. 6時間の冷虚肺保存ののち,左肺を上葉と下葉に分け,気管支,肺動脈,肺静脈をトリミングした.レシピエントとしてドナーより大型の体重30kgのブタを用いた.全身麻酔下に左主肺動脈,左上下肺静脈,左主気管支を各々クランプし切離,左肺上葉,または下葉のグラフトを,気管支,肺動脈,肺静脈の順に吻合し,換気,再灌流を行った.再灌流後4時間まで経過観察し,生理学的なパラメータを記録,移植肺葉の局所CO2濃度を測定した.また移植肺の肺静脈血を直接穿刺により採取し,血液ガス分析を行った.以上により,ブタ肺葉移植モデルを確立するとともに,上葉移植と下葉移植の生理学的な違いを記録した. ② 選択的胃液注入によるブタ誤嚥性肺炎ドナーモデルの導入とin vivoでの局所CO2濃度測定:同様に体重45 kgのブタを用いた.全身麻酔酔下に気管支鏡を用いて選択的に左上葉,または下葉に胃液を注入し, 4時間の換気を行った.気管支鏡下に各肺葉気管支の局所O2濃度,CO2濃度,気道内圧を測定した.また超音波により各肺葉の肺水腫の程度を評価した.さらに左心房へ流入する肺静脈それぞれを直接穿刺することによりdifferential ABGを測定した.次いで,①と同様にドナー肺の灌流,摘出,肺葉移植を行い,再灌流後4時間まで経過観察し,各種パラメータを測定した. 小括:ブタ肺葉移植モデルは技術的に可能であり,手技的に確立された.局所CO2濃度に有意差を認めなかったものの,局所気道内圧と超音波での肺水腫の評価では有意差を認めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想されたものとは一部異なる結果はあるものの,臨床上必要とされるドナー肺葉ごとの移植適応評価を確立するという目的を達成するための研究としては,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
局所CO2濃度に有意差を認めなかったため,局所気道内圧,超音波での肺水腫の程度,インドシアニングリーンの滞留時間がドナー肺葉ごとの移植適応評価に有用であるかどうかを検討する.実験群,および対照群を以下の通りとする. A. 実験群A(重度障害左肺下葉移植):1肺区域あたり胃酸10mLを注入し重度障害となった左肺下葉移植(n = 4)を行う. B. 対照群B(中等度障害左肺下葉移植):1肺区域あたり胃酸5mLを注入し中等度障害となった左肺下葉移植(n = 4)を行う. C. 対照群(健常左肺下葉移植):健常左肺下葉移植(n = 4)を行う. ドナー肺葉において局所気道内圧の測定,超音波での肺水腫の程度の評価,インドシアニングリーンの滞留時間の測定を行う.左肺下葉の移植を行い,再灌流後4時間の評価を行う.肺生検検体は湿潤乾燥重量比(肺水腫の指標),病理学的評価に用いる.HE染色にて肺障害の程度をLung Injury Scoreにより評価し,TUNEL染色においても細胞のアポトーシスの割合から,肺障害の程度を評価する.さらに,ZO-1染色で肺血管内皮細胞間を接着する装置であるtight junctionの障害程度を評価する.液体窒素にて冷凍保存した肺生検検体の一部からは蛋白質を抽出し,同じく冷凍保存されたレシピエント血清と共に,interleukin(IL)-1β,6, 8, tumor necrosis factor (TNF)-α などの各種炎症性サイトカインをELISA法で解析する.さらに,レシピエント血清を用いて,ELISA法でCytokeratin 18-M30を測定しアポトーシスの評価を行う.以上の結果から,いずれの評価項目がドナー肺葉ごとの移植適応評価に有用であるかどうかを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
動物の共同購入や消耗品の一括購入により使用額を節約することができたため. 次年度以降も研究を加速させていくため,次年度に適正に使用する予定である.
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