研究課題/領域番号 |
21K08900
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
片岡 瑛子 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (00746919)
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研究分担者 |
寺本 晃治 滋賀医科大学, 医学部, 特任講師 (10452244)
大塩 恭彦 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (60731916)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肺がん / がん間質線維芽細胞 / CD271 |
研究実績の概要 |
pN0M0の早期非小細胞肺がん組織75症例において、がん間質線維芽細胞(Cancer-associated fibroblast: CAF)におけるCD271の発現は、術後再発と関連し、無再発生存率が有意に低いことから、術後再発予測因子として有用である可能性が示唆された。一方で、pN2M0の局所進行非小細胞肺がん組織52症例の検討では、原発巣と比較してリンパ節転移巣でCD271高発現症例が多く、より術後再発や脈管浸潤との関連を認めた。さらに、原発巣ではなく、リンパ節転移巣におけるCAFのCD271の発現が、無再発生存率の有意な低下と関連していた。これらの結果より、非小細胞肺がんにおいて、CAFにおけるCD271は、転移巣で発現が増強し、予後不良因子として有用である可能性が示唆された。 次に、肺がんのCAFにおけるCD271の発現がどのように誘導されるかを検討した。肺がん細胞株A549の培養上清で、CAFを培養すると蛋白レベルでCD271の発現が増強しており、肺がん細胞との相互作用によりCAFにおけるCD271の発現が誘導されることを確認した。さらに、CAFにおけるCD271の機能を評価するため、CD271の機能阻害としてγ-secretase阻害薬を用いて、増殖能・遊走能・浸潤能を評価した。その結果、肺がん細胞株A549の培養上清で、CAFの遊走能・浸潤能は増強し、γ-secretase阻害薬により促進した遊走能・浸潤能はいずれも抑制された。増殖能に関しては有意な変化はみられなかった。これらより、肺がん細胞との相互作用によりCAFに誘導されたCD271は、運動能促進に関与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画通り、非小細胞肺がん組織のがん間質線維芽細胞におけるCD271の発現に関する免疫組織化学染色による検討では、予定した症例数の実験を終了し、現在データを解析中である。肺がん間質線維芽細胞と肺がん細胞との相互作用を介したCD271発現の誘導および機能に関しての実験に関しても予定通り進められており、データも順調に得られていることから、本課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、CAFにおけるCD271が運動能をどのような機序で促進するかをin vitro実験より明らかにする。また、CD271の発現を誘導する液性因子を特定する。さらに、CAFにおけるCD271の発現により、肺がん細胞に及ぼす影響について検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬や実験消耗品の物品費を必要最低限に抑えて予算を執行したため、若干の繰越金が生じた。次年度で行う実験の試薬や実験消耗品に使用する予定である。
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