研究課題/領域番号 |
21K08907
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
石井 光寿 長崎大学, 病院(医学系), 医員 (60783066)
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研究分担者 |
宮崎 拓郎 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (00584749)
土谷 智史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (30437884)
永安 武 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80284686)
佐原 寿史 鹿児島大学, 総合科学域総合研究学系, 准教授 (90452333)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脂肪由来間葉系幹細胞 / 肺胞バリア機能 |
研究実績の概要 |
実験計画書に基づき、I) in vitroでの疑似肺胞壁のバリア機能の比較を行った。 Transwell共培養システムを用いて、Transwellの半透膜上に肺胞上皮細胞、半透膜下に血管内皮細胞を播種し、疑似肺胞壁を作製した。この血液空気関門モデルにおいて、下段のシャーレ上に脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)および骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)を播種し、経上皮電気抵抗(transepithelial electrical resistance; TEER)値を測定したところ、ADSC群で有意にTEER値の上昇を認めた。 また、ADSCの血液空気関門バリア機能増強効果を検証するため、下段のシャーレ上にADSCを播種する群(ADSC群)と播種しない群(非ADSC群)とで、TEER測定、フルオレセインナトリウムを用いた透過性試験、タイトジャンクション関連蛋白Zo-1の免疫染色、電子顕微鏡を用いた形態観察、PCR arrayを用いた細胞接合部関連遺伝子発現の評価を行った。 TEER測定では、ADSC群で有意にTEER値の上昇を認め、透過性試験では、ADSC群で有意に透過係数の低下を認めた、蛍光免疫染色では、ADSC群で細胞接合部においてZo-1の発現増加を認めた。また、電子顕微鏡での観察では、ADSC群では、非ADSC群と比較して、肺胞上皮細胞間の間隙が広く観察され、細胞接合部の形成不良が示唆された。細胞接合部関連遺伝子発現の評価では、ADSC群において、非ADSC群と比較して、タイトジャンクションの主要な蛋白であるclaudin familyのうち、claudin-4を含む複数のclaudinの遺伝子発現増加を認めた。 以上の結果をPharmaceutics誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験初年度でin vitroでの疑似肺胞壁のバリア機能の比較を行い、概ね当初の計画通りの進捗である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、次年度以降で下記II)およびIII)を行っていく。 II) ex vivoでの肺胞バリア機能の比較とin vivoでの生存実験(担当:石井、宮崎、土谷) 実験1:ラットALI/ARDS細胞治療モデルの作製(Lipopolysaccharide (LPS) 5mg/kgを気管内投与して、ALI/ARDSモデルとする。LPS投与1~2日目に、モデルにADSCあるいはBMSCを頚静脈より投与する。) 実験2:ex vivoでの肺胞バリア機能の比較(上記モデルで細胞治療後2日目(急性期)、7日目(亜急性期)に採血後、左肺を摘出する。ADSC投与、BMSC投与、未投与の3群で以下の比較を行う。① ELISA法による血清TNF-α、IL-1β、IL-6、HGF、VEGF、IGF-1の測定。② bronchoalveolar lavage fluid (BALF)内の好中球数の比較。③バイオリアクター内で、permeability assay(肺動脈からデキストランを注入してその回収率を測定し、透過性を評価)、灌流時の肺動脈圧の測定(PowerLab)、毛細血管通過過程のイメージング。また、電子顕微鏡と病理像によるニッチ構造の確認、免疫組織学的バリア機能の評価を行う。) 実験3:in vivoでのラット生存比較実験( II) 実験1のモデルでLPSの投与量を変化させ、上記3群で生存を比較する。生存ラットは、細胞治療後7日目に肺を摘出し、病理所見や免疫染色による評価を行う。) III) 大動物実験によるADSC静脈投与安全性の検証(担当:永安、佐原、宮崎、土谷、石井)(ブタ皮下脂肪よりADSCを分離した後、培養し、静脈内投与する。フィルターのサイズによって、投与後の動脈血酸素飽和度SpO2、Dダイマーを含む一般血液データ、病理像で肺塞栓が起こらないか検証する。)
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度で施行予定であったexosome解析を次年度に実施するため、解析費用にとして用いる。
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