研究課題/領域番号 |
21K08909
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
坂尾 幸則 帝京大学, 医学部, 教授 (00274605)
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研究分担者 |
出嶋 仁 帝京大学, 医学部, 助教 (00891201)
山内 良兼 帝京大学, 医学部, 講師 (30445390)
齋藤 雄一 帝京大学, 医学部, 准教授 (70384071)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CTC / リキッドバイオプシー / EGFR / 肺癌 / 遺伝子異常 |
研究実績の概要 |
本研究の一つのテーマはCTC自動検出装置の独自開発であり、光学顕微鏡による検出の鍵となるCTCのスライドグラスへの転写装置の開発を行った。初年度開発の樹脂製パッドを先端部に装着した直接加圧式CTC転写装置は性能的に十分ではなく、本年度は新たに空気加圧式転写装置を試作した。その結果、空気加圧式が形態保持能力が優れた装置であることが判明したため、この転写装置と既開発のCTC分離装置を組み合わせることにより光学顕微鏡を用いてCTCを免疫組織学的に検出できる独自のプラットフォームを完成した。 次に本装置を用いて肺癌におけるCTCの臨床的意義を検証した。33例の肺がん患者検体(肺静脈血: PVB、肺動脈血: PABおよび末梢血: PB)を用いてCTCの臨床的意義の検討を行った。その結果、興味あることにPVBとPABはいずれもPBに比べて有意にCTC数が多く、症例数は少ないものの病期と相関する傾向が見られた。またPVB、 PABではクラスターCTCが多いことから遺伝子解析に有用であることが判明した。 さらにCTCの遺伝子解析法の検討を行った。サイトケラチン免疫染色によるCTC計数後にスライドグラスからDNA抽出を行うための発色法について検討し、2次抗体の標識としてPOXに比べALPの方が活性酸素によるDNA分解を防ぎ、DNA抽出が高効率なことが判明した。このDNAを用いてDropletデジタルPCR法による遺伝子変異解析法を確立した。数の多い肺静脈血(PVB)を用いてCTCのEGFR変異について解析を行った。肺静脈血PVBからCTCが検出できた8例を対象とし、7例にCTCが同定され、そのうち3例にEGFR変異が検出された。肺切除組織からのEGFR検査と結果が一致したのは6例(変異ありでの一致が2例、変異無しでの一致が4例)、不一致は2例であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CTCを簡便に捕集できる既開発の自動分離装置に加えて、今回、細胞の転写工程も自動化したことにより、CTCを病院内の病理検査の一環として検査できる技術的基盤を確立した。また本研究は現在開発が期待されているCTCを用いた遺伝子解析の可能なリキッドバオオプシーの基礎となり得る可能性を有するものと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究によって技術的には病院の検査室内でも正確、簡便、比較的低コストにCTC検査が可能な自動検出装置の開発を達成した。今回の研究では装置開発と同時に臨床試験を含めたCTCの光学顕微鏡的検出と遺伝子解析という2つの医学的に重要な機能を同時に解析できるシステムの確立に時間を要し、臨床研究の検討数が30例程度とパイロット研究の段階にとどまった。今後は本研究成果を基盤として、さらに数年をかけ臨床実証研究を行い(症例登録目標100例)、また肺癌の中でも末梢血のCTC数が比較的に多いことが期待される小細胞癌なども肺癌CTC研究の守備範囲に加え、薬物療法や化学療法の効果判定などにも応用範囲を広げてゆく予定である。またコストの課題があるが、10個程度の少数個のCTCでも検出可能となるようにシングルセル解析法の導入など遺伝子解析法の検出感度の向上に取り組んでいきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年に引き続きコロナの影響があり、手術数が減少し、予定検体数に満たなかったため。
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