研究課題/領域番号 |
21K08914
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
岡本 淳一 日本医科大学, 医学部, 非常勤講師 (10339377)
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研究分担者 |
許田 典男 日本医科大学, 医学部, 講師 (60614758)
窪倉 浩俊 日本医科大学, 医学部, 准教授 (80328799)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胸腺腫組織型 / EMX2抗体陽性部位 / 組織内リンパ球による影響 / 幼弱なリンパ球 |
研究実績の概要 |
EMX2の抑制によりWNT signalingを活性化することで、胸腺腫の浸潤性が強くなる可能性があり、そしてその変化が組織型に関連すると考えた。 「胸腺腫における病理型の分子生物学的背景を確認し、EMX2とWNTsの発現が胸腺腫細胞の浸潤性獲得に関わっている」ことの確認が目的である。昨年度に得られた結果として、胸腺腫においてEMX2は陽性だが、陽性となっているのは腫瘍細胞ではなくリンパ球(おそらくTdT陽性となる幼弱なTリンパ球)と思われた。これより摘出標本を確認していく必要性があり、かつ、問題点の抽出が重要となると考えた。 本年度は正常胸腺、胸腺腫および胸腺癌においてEMX2-WNT経路について発現を調べた。 胸腺疾患20例(男性11例、女性9例、平均年齢53.4(±12.0)歳)をWHO分類に基づいて分類およびステージングを行い胸腺腫12例(A型3例、AB型3例、B1型2例、B2型3例、B3型1例)、胸腺扁平上皮癌4例、正常胸腺(胸腺嚢胞)4例のその代表的なPPFE標本に対しEMX2 およびWNT経路の下流に位置するAPC およびβ-cateninについて免疫染色を施行し、その発現について検討を行った。正常についてはTdTとCD1aについても免疫染色を施行した。EMX2は正常胸腺および胸腺腫に存在するTdT (+), CD1a (+)となる幼弱なT細胞に陽性となった。B1型やB2型胸腺腫における腫瘍性上皮細胞においてはEMX2の発現は見られなかったが、A型胸腺腫および胸腺癌では弱い陽性像が認められた。B3型胸腺腫については明瞭な陽性を示す細胞が散在性に認められた。腫瘍の進展により幼弱化を来した可能性があるが、胸腺癌症例において強陽性像がないことから一元的な説明は困難であった。 EMX2は胸腺の幼弱なT細胞に陽性であり、幼弱なT細胞のマーカーとなり得ると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. EMX2抗体を用いたパイロットスタディ 2. EMX2-Wnt pathwayに関わり今回検討予定の抗体(EMX2 ,APC, βcatenin)の選定と陽性対象選定および免疫染色の条件設定 3. 対症患者リストを元にどの標本を免疫染色するかを再鏡検し選定している。年度末までに今後免染するのに必要な物品は概ね購入が済み納品は済んでおり標本ブロックも確保できている。 4. 3.に対して免疫組織染色を行い、EMX2およびβcateninの染色状況を確認した。 5. 幼弱なリンパ球へのEMX2の染色状況からTdT, CD1aの染色状況を確認し、EMX2との一致性を確認した。免染の工程は再現性も含め専門性が重要なため、日常業務の合間をみて、臨床検査技師の業務が比較的忙しくないときにお願いしている。また、病理専門医の業務も激務であり、この結果、通常業務に若干おされて遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は 1. EMX2が本当に幼弱な胸腺のT細胞で発現しているのかを免疫二重染色法やによる分子病理学的な解析手法を用いての確認 2. 本当にWNT経路の活性化がないのかをより下流のc-Mycやcyclin D1の免疫染色などを用いて、再検討。統計的な処理を行い、さらに必要な免染を追加していくという方向で考えている。 3. 幼弱なリンパ球マーカーとしての有用性についての検討 4. 最終年度に当たるため、新たに分かったことなどを併せ、報告としてまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、先に述べた進捗状況の事由により、やや研究が遅れている状況であった。これと併せ、既に存在していた一部抗体の使用が可能であったことから、予定使用金額が少なくなり差異が生じた。次年度は、新たな抗体のチェックや得られた結果を受けた論文発表などがあるため、進捗状況に併せて順次使用していく予定
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