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2021 年度 実施状況報告書

活性化脊髄後角アストロサイトのL-乳酸輸送異常による神経障害性疼痛の機序解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K08926
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

井口 広靖  名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (20811590)

研究分担者 志田 恭子  名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 臨床研究医 (00381880)
大澤 匡弘  名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 准教授 (80369173)
祖父江 和哉  名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (90264738)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード神経障害性疼痛 / L-乳酸 / アストロサイト
研究実績の概要

本研究の目的は、脊髄後角アストロサイトの選択的機能調節を用いて、痛覚伝達の調節機構や神経障害性疼痛の発症の分子機構を明らかにすることである。これまでに、脊髄後角アストロサイトのみの機能を人為的に調節する手法を、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)と化学遺伝学的手法(ケモジェネティクス)を用いることで確立している。
本研究では、興奮性のデザイナー受容体(DREADD)であるhM3Dqをアストロサイトのマーカータンパク質であるGFAPをプロモーターとして発現させるAAVを用いて、脊髄後角アストロサイトにhM3Dqを発現させ、リガンドであるクロザピン-N-オキシド(CNO)を投与した。CNOの腹腔内投与により投与後3時間を最大とした機械刺激に対する反応性の増大(機械痛覚過敏)が認められた。このCNOによる機械痛覚過敏は、脊髄くも膜下腔へモノカルボン酸トランスポーター(MCT)阻害薬である4-CINを前処置することで消失した。MCTは、神経細胞やアストロサイトへL-乳酸を輸送する担体であることから、L-乳酸の産生増大が脊髄後角の痛み刺激による神経伝達を亢進する可能性が示唆された。
そこで、L-乳酸の脊髄後角への神経活動に対する影響を検討した。L-乳酸を脊髄へ処置すると、脊髄後角における触刺激による神経発火が亢進した。
L-乳酸は神経細胞へ取り込まれてミトコンドリアでATPへと変換され、神経伝達の際に必要なエネルギーとして利用される。L-乳酸を処置した際の神経細胞のATP量を測定するため、ATPにより蛍光を発するタンパク質(蛍光ATPプローブ)であるATeamを神経細胞に発現するAAVの作製を行った。、また、蛍光ATPプローブを神経細胞マーカーであるシナプシンの下流で発現するAAVの作製もでき、脊髄後角の神経細胞へ特異的に発現することを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度に計画をしていた研究をすべて実施することができ、さらに、来年度に作成予定であったアデノ随伴ウイルスベクターが完成し、その神経細胞への発現特異性も確認できた。また、神経障害性疼痛モデルの作製も完了しており、最終目的である神経障害性疼痛への脊髄後角アストロサイトの関与について研究を行う準備も整った。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策として、研究計画に従い、脊髄後角アストロサイトの特異的活性化による機械痛覚過敏の発現のメカニズムについて、行動学的、電気生理学的、分子生物学的、イメージングによる手法の多角的な視点から検証を進める。具体的には、以下の通りである。
・行動学的解析:脊髄後角アストロサイト選択的活性化により影響を受ける細胞内情報伝達経路を、阻害薬を用いて明らかにする。
・電気生理学的解析:L-乳酸による脊髄後角における神経発火の感作に対するMCT阻害薬の影響を検討し、L-乳酸が神経細胞へ取り込まれることで感作が発現するかを明らかにする。
・イメージング解析:ATeamを神経細胞へ発現するAAVを用いて、FRET法により、L-乳酸処置により脊髄後角神経細胞内のATP量が変化するか明らかにする。
・分子生物学的解析:L-乳酸の処置により脊髄における細胞内情報伝達系の活性化をウエスタンブロット法により解析する。

次年度使用額が生じた理由

動物の購入や維持、抗体の購入が必要である。また、電気生理学実験の消耗品類、イメージングに用いるプローブ類を、新たに購入する必要がある。

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公開日: 2022-12-28  

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