研究課題/領域番号 |
21K08932
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
濱田 宏 東京医科大学, 医学部, 教授 (10218539)
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研究分担者 |
東 俊晴 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 医師 (60284197)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ニューロキニン1受容体 |
研究実績の概要 |
緩和ケアを行っているがん患者は血栓形成性が亢進した状態にあることが多く、実際、血栓塞栓症はがん患者の主要な死因のひとつである。本研究課題では、当該の研究グループが周術期患者において血栓傾向のバイオマーカーとして提唱している全血中ニューロキニン1受容体(NK1R)スプライスバリアントが、緩和ケアを受けているがん患者においても同様のバイオマーカーとなるかどうかを探索する計画である。 残念ながら研究初年度は新型コロナウィルス感染症の流行が継続している状態であったため、がん患者の心情を考慮すると、わずかではあるが侵襲を伴う前向き観察研究に参加を促すような説明同意が躊躇される状況であった。 そこでNK1Rが発現している細胞として注目している単球に実際にスプライスバリアントが発生した場合、血栓形成に関連するような細胞機能の変化が生じるかどうかについて試験管的な解析を行った。単球系樹立細胞株であるTHP-1は正常ヒト単球と同様、完全長NK1Rと比較してエクソン情報が一部欠落したアミノ酸配列の短いNK1Rを構成的に発現している。この細胞にレポーター蛍光蛋白質(GFP)と完全長NK1Rを同時に発現するように遺伝子配列を組み込んだプラスミドをエレクトロポレーション法で導入した。遺伝子導入12時間後にはGFPの発現がフローサイトメトリーで確認された。また、これらの細胞群では対照のTHP-1と比較しアポトーシス細胞比率が高く、ホスファチジルセリンを表出した凝固活性小胞の発生も多かった。これらのことから単球においては完全長NK1Rが発現する状況で凝固活性が高まることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要にも記載したように、新型コロナウィルス感染症の流行が継続している状況において、緩和ケアを受けるがん患者を対象としてわずかではあるが侵襲を伴う前向き観察研究を施行することが躊躇されたため、緩和ケアを受けるがん患者のNK1R受容体拮抗薬(アプレピタント)使用の有無と血栓性イベント発生の関連を調査する前向き観察研究の実施には着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
緩和ケアを受けるがん患者に対して、前向き観察研究を施行できる社会的状況となるかどうかが未だ見通せない新型コロナウィルス感染症の流行が続いている。当面は血栓性イベント発生とアプレピタント使用状況を後ろ向きに観察する臨床研究を施行することのほか、現在行っているような細胞レベルの実験的研究を継続して本研究課題に関連する知見を集積する。
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次年度使用額が生じた理由 |
上記のように予定された臨床観察研究の開始が遅延しているため、観察に必要な試薬の購入等の実績がなく研究費の使用額が当初の見積もりより少なかった。しかし遅延された臨床観察研究についても開始する予定であるため、次年度以降に使用が見込まれる。
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