研究課題/領域番号 |
21K08934
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
石川 真士 日本医科大学, 医学部, 准教授 (30714745)
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研究分担者 |
岩崎 雅江 日本医科大学, 医学部, 講師 (20744428)
坂本 篤裕 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (30196084)
間瀬 大司 日本医科大学, 医学部, 講師 (60614831)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 麻酔薬 / 敗血症 / 腎機能障害 |
研究実績の概要 |
本研究では、麻酔薬の1)敗血症における腎機能障害、2)癌細胞への影響をテーマに研究している。本年度は「敗血症における腎機能障害に対する麻酔薬の保護作用の検討」として、腎機能障害を発症したラット敗血症モデルに対し、対照(C群:生食)およびミダゾラム(M群:0.6 mg/kg/hr)、プロポフォール(P群:30 mg/kg/hr)、デクスメデトミジン(D群:5 μg/kg/hr)を投与し比較検討した。 薬剤間で鎮静度、血圧および脈拍の有意差を認めなかった。敗血症モデルにおいてD群は腎障害増悪、M群は腎機能保護を示し、P群では腎機能に影響を与えなかった。蛍光免疫染色ではC群と比較し、D群は糸球体および尿細管NFκΒ、リン酸化NFκΒ、IKKβ、リン酸化IKKα/βの発現が有意に増加し、L-M群は糸球体NFκΒ、pNFκΒと尿細管NFκBの発現が抑制された。 敗血症におけるNFκΒ活性化経路の中で、デクスメデトミジンは糸球体および尿細管でIKK複合体の活性化に続いてNFκΒの活性化を亢進することで腎障害増悪を、ミダゾラムは糸球体および尿細管でNFκBの発現を抑制することで腎保護効果をもたらすことが示された。以上より、腎機能障害を有するラットLPS敗血症モデルにおいて、デクスメデトミジンは腎機能障害増悪することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、臨床において適切な麻酔薬の使用方法を確立することを目的に「敗血症」、「癌」を対象に麻酔薬の作用を検討している。 本年度は「腎機能障害を有する敗血症モデルにおける麻酔薬の作用」をテーマに研究をした。モデルを作成し、腎機能障害増悪に関わるタンパクの検討を行った。デクスメデトミジンは糸球体および尿細管でIKK複合体の活性化に続いてNFκΒの活性化を亢進することで腎障害増悪をもたらすことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は「癌細胞に対する循環作動薬の抗腫瘍、腫瘍促進作用の検討」をテーマに研究を行う。ヒト肺癌細胞(A549細胞)を用いて、手術侵襲を再現しノルアドレナリン負荷癌細胞モデルを作成する。β遮断薬としてプロプラノロール、ランジオロールの2剤を様々な薬剤濃度で肺がん細胞、ノルアドレナリン負荷肺がん細胞へ2時間投与し、β遮断薬のがん細胞への影響を検討する。細胞の活動性は、薬剤投与前、24時間後、48時間後において細胞周期(蛍光免疫染色法:Ki67染色)、増殖能(CCK8アッセイ)、遊走能評価を行う。また、がん細胞への作用機序を明らかにするため、がん進展に関わるmiRNA、mRNAをqRT-PCRで測定する。さらに下流pathwayは、qRT-PCRにて有意差のあったmiRNAのmimic/inhibitorを投与し、その発現を増幅あるいは抑制し、麻酔24時間後にWestern blot法、蛍光免疫染色法にてタンパク質の発現変化を解析する。 以上方法により、肺がん細胞に対するβ遮断薬の作用、その機序を明らかにする。
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