研究課題/領域番号 |
21K08935
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
岩崎 雅江 日本医科大学, 医学部, 講師 (20744428)
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研究分担者 |
坂本 篤裕 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (30196084)
石川 真士 日本医科大学, 医学部, 准教授 (30714745)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 麻酔薬 / 癌細胞生理 / 局所麻酔薬 / ACE2 / HIF-1α / mRNA |
研究実績の概要 |
悪性腫瘍治療の第一選択は全身麻酔下の外科的治療である。近年、麻酔薬そのものが悪性腫瘍の長期予後に影響を及ぼす可能性が示唆されている。本研究では、培養ヒト癌細胞を用いて、「臨床用量の各種麻酔薬が癌細胞生理にどのように影響するか」を分子生物学的に検討している。 本年度は腎明細胞癌細胞(RCC-4細胞)に対して、レボブピバカイン、ロピバカインを2時間暴露した。昨年度のA549細胞での結果と同様に、ロピバカイン投与群では全濃度で細胞増殖抑制、遊走能抑制を示し、ACE2発現は濃度依存性に増強され、HIF-1α・MMP-9発現は低用量でも抑制された。レボブピバカイン投与群もロピバカイン投与群と同様の傾向を示したが、効果はロピバカイン投与群の方が強かった。 続いて、A549細胞およびRCC-4細胞にACE2 siRNA前処置を行った後、レボブピバカイン、ロピバカインを2時間暴露した。ACE2発現はsiRNA処置群で70%程度の発現抑制を得られ、両細胞ともsiRNA投与群でレボブピバカイン、ロピバカインによる細胞増殖抑制、遊走能抑制がキャンセルされ、HIF-1α・MMP-9発現は抑制されなかった。上記により、この2細胞において「レボブピバカイン、ロピバカインはACE2発現を介してHIF-1α・MMP-9発現を抑制し、癌抑制効果を示す」ことが示唆された。続いて、PCRアレイを治療群・siRNA群について行っている。 現在、腸管癌細胞(MELS細胞、ss-2細胞)に対しても、静脈麻酔薬(プロポフォール)、レボブピバカイン、ロピバカインを2時間暴露し、細胞増殖能、代謝能を評価している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究テーマは、麻酔薬による癌細胞生理への影響の検討である。 前述の通り、静脈麻酔薬および局所麻酔薬を2時間暴露することで、癌細胞生理が変化することが判明した。ACE2 siRNA投与により、局所麻酔薬による癌抑制効果はキャンセルされ、PCRアレイでは局所麻酔薬・ACE siRNA投与により様々なmRNA変化が惹起されていることが示された。 当初は肺癌細胞、腎癌細胞のみでの研究を予定していたが、院内からの腸管癌細胞の提供を受け、MELS細胞、ss-2細胞でのプロポフォール、レボブピバカイン、ロピバカイン暴露後のACE2発現変化、主要な癌悪性度マーカーの発現変化、癌細胞生理変化も評価した。 上記結果は当初の計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
A549細胞での実験は、ロピバカイン暴露の有無とACE2 siRNA処置の有無を合わせた4群のサンプルについて、癌細胞生理変化、蛍光免疫染色、PCRアレイを完了した。PCRアレイ結果解析から個別RT-PCRを行い、論文作成に移行する。レボブピバカイン暴露群については、ACE2 siRNA処置の有無を合わせた4群のサンプルについて、癌細胞生理変化、蛍光免疫染色を完了した。個別RT-PCRでの評価を行い、論文作成に移行する。 RCC-4細胞での実験は、ロピバカイン暴露の有無とACE2 siRNA処置の有無を合わせた4群のサンプルについて、癌細胞生理変化、蛍光免疫染色、PCRアレイを完了した。PCRアレイ結果解析から個別RT-PCRを行い、論文作成に移行する。レボブピバカイン暴露群については、ACE2 siRNA処置の有無を合わせた4群のサンプルについて、癌細胞生理変化、蛍光免疫染色を完了した。個別RT-PCRでの評価を行い、論文作成に移行する。 MELS細胞、ss-2細胞についての実験は、プロポフォール、レボブピバカイン、ロピバカイン暴露による癌細胞生理変化、蛍光免疫染色を完了した。続いて、2D・3D培養での形態変化を共同研究施設にて電子顕微鏡観察を依頼する予定である。主な癌悪性度マーカーについて個別RT-PCRを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が当初の予定よりも順調に進展したため、PCRアレイを早めたことに加えて、扱う細胞を2種追加したことから、次年度使用額が生じた。
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