研究課題/領域番号 |
21K08939
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
西岡 慧 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 麻酔科フェロー (60755544)
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研究分担者 |
木村 麻衣子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 医師 (50817301)
東 俊晴 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 医師 (60284197)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 単球 / アポトーシス / アポトーシス小胞 / 凝固活性小胞 / スーパーオキシド |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「細胞外SODは単球由来凝固活性小胞の発生を抑制するか?」という疑問を解決することである.そのため,単球から再現性良く凝固活性小胞を発生させる病態生理学的な刺激方法を探索し,なおかつその現象が当該分野(外科系麻酔学)において研究意義のある病態モデルであることが望ましい.周術期臨床において血液製剤を使用する際に同種血輸血を行う場合は氷冷による製剤保存が,また自己血輸血を施行する場合は氷冷のほか室温保存が施行される.このような状況において製剤中に含まれる白血球が凝血の原因となることは以前から示唆されていたため,同様の状況(低温曝露)で単球の凝固活性小胞を惹起させることを確認した. ヒト単球系細胞株であるTHP-1を一定時間氷冷温度で保存し,フローサイトメトリーを用いて細胞浮遊液中に発生する凝固活性小胞を定量した.また同時にミトコンドリア膜電位を蛍光指示薬を利用して測定した.THP-1の低温曝露後,37℃に復温し細胞内ミトコンドリア膜電位を観察したところ,低温曝露時間が短いと(2時間以内)ミトコンドリア膜電位は正常に復帰するが,低温曝露時間が長いと(最長48時間まで観察)ミトコンドリア膜電位が正常復帰する細胞と膜電位が低い状態を継続する細胞に分かれた.ミトコンドリア膜電位低下はアポトーシス誘導の直接的な原因であり同様な状況によってアポトーシス小胞が発生する.このアポトーシス小胞はホスファチジルセリンを表出しているためプロトロンビナーゼ複合体を結合し血液凝固の足掛かりとなる.すなわち単球由来凝固活性小胞の本体である.ホスファチジルセリンと結合する蛍光試薬を利用しこの凝固活性小胞を定量したところ,ミトコンドリア膜電位低下と連動してこの小胞が増加することが確認された.また,低温曝露された細胞内のスーパーオキシド発生は対照(37℃加温)細胞より多かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画として,ヒト単球系細胞のNADPHオキシダーゼ(NOX)活性を増加させる病態モデルを確立し,NOX活性を実際に定量測定可能とすることを挙げていた.上記の研究実績から初年度の計画はおおむね達成されているといえる. 上記実績に記載した研究技術のほか,細胞膜分画と細胞質分画を分離し,それぞれの試料に対してウェスタンブロッティングを施行する必要があるが,こちらについても分担研究者が行っている別の研究計画により技術的な解決がなされている. これらのことから,本研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
上記のように,単球の低温曝露後の37℃復温による単球アポトーシスの誘導ならびに凝固活性小胞の発生の実験的再現性が確認され,ひとつの病態モデルが確立された. 今後はNOX活性の変化がアポトーシスと連動して起こることを確認し,細胞外に添加したスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)が凝固活性小胞の発生を抑えることを確認する必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は既受領額の6%程度であり,おおむね計画通り資金が利用されている.購入が必要な物品の多くは試薬であり,これらはすべての研究年度において使用されるため,来年度同様な試薬の追加購入に使用する.
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