研究実績の概要 |
心不全患者の心臓は、健常人と異なったエネルギー代謝機構を示すとされている。また、病的心肥大の発生メカニズムの一つにエネルギー代謝の変化が関与するとした報告が散見され、心臓が圧負荷や虚血といった病的なストレスを受けると代謝が大きく変化することが分かっている。 申請者らの研究グループは、吸入麻酔薬に細胞膜特殊構造であるカベオラを介した心筋保護作用があることを明らかにしてきた。しかしながら、心肥大の発生メカニズムに対する細胞膜特殊構造の影響については未だ明らかになっていない。 12週齢マウスの心エコー(Sonos 5500, Philips Medical Systems)・心臓カテーテル(SPR-671, Millar Instruments)による心機能評価(心壁厚, ejection fraction, %fractional shortening, 左室圧, dP/dtmax, dP/dtmin等)、心臓や肺の重量測定などを行った。 心筋細胞への脂肪酸およびグルコースの取り込みに関連する細胞膜上の代表的なトランスポーターとして、GLUTがある。吸入麻酔薬イソフルラン1MACを前投与した群(イソフルラン群)とコントロール群を比較した。静脈麻酔下にマウスから心臓を摘出し、各タンパク質(Cav-3、GLUT 4)の発現をウエスタンブロット法で確認した。イソフルラン群ではCav-3とGLUT 4の発現が上昇していることが明らかとなった。また、摘出心から細胞膜成分のみを分離し、ウエスタンブロット法で同タンパク質の発現を確認した結果、同様にイソフルラン群ではCav-3とGLUT 4の発現が上昇していることが明らかとなった。
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