同一被験者における非妊娠期から妊娠期、産褥期それぞれにおける脳機能 的結合解析をプロスペクティブに行い、先行研究にて見出した眼窩前頭皮質をフォーカスとした前帯状皮質との脳領域間結合特性と血圧データとの関係を網羅的に解析した。3テスラの高解像度MRI装置にて安静閉眼状態時のBOLD信号を計測し、6分間の時系列データから 0.01ー0.1Hzの低周期信号から大脳全皮質内のvoxel(6×6×6mm)におけるrGCを計算した。また、血算生化学検査項目に 加え、sFlt-1、PlGF、エストラジオール、プロゲステロンの血中濃度を副次的評価項目とし、前頭葉機能の評価方法として、ストループ試験およびトレイルメイキングテストによる神経心理検査、さらに簡易抑うつ症状尺度、エジンバラ産後うつ病自己評価表を用いデータ収集を完了させた。グラフ理論を用いたネットワーク解析から、次数中心性および固有ベクトル中心性をそれぞれについて解析を行なった結果、分娩前の高血圧期、分娩後1ヶ月後、月経周期が戻った非妊娠期にかけて変化がみられたvoxelが複数見出された。これらのvoxelが存在する領域は、楔前部および頭頂葉であり、それぞれのvoxelにおける次数中心性と固有ベクトル中心性の値と血圧値をプロットすると、収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧において正の相関がみられることが判明した。残念ながら、ホルモンやsFlt-1、PlGF、神経心理検査項目においては、時相における変化に血圧と関係がみられる項目は見つからなかった。
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