研究実績の概要 |
Bennett and Xieの方法で、末梢性神経障害性疼痛モデル(CCI)を作製した。雄Sprague-Dawleyラットを三種混合薬の腹腔内投与による麻酔下に左側大腿骨上の皮膚を切開し、坐骨神経を4.0-silk糸で4箇所緩く結紮した。処置後4日目から左側下肢に機械・熱・冷痛覚過敏が出現した。別のラットには坐骨神経を剥離・露出のみを行うsham手術を行い、痛覚過敏の出現が坐骨神経の結紮によることを確認した。薬物を髄腔内に投与するため、CCIモデルの作製に続いて麻酔下に大槽から尾側にポリエチレンカテーテル(PE-10)を8cm挿入した。薬物を脳室内に投与するためラット右側脳室に22G のステンレス製ガイドカニューレを頭頂骨より4.0 mm 挿入し頭部に固定した。処置から7日後に30Gマイクロシリンジまたは29G の注入用カニューレをガイドカニューレに挿入して薬物群にはスフィンゴシン1リン酸受容体サブタイプ2 (S1P2)阻害薬のJTE-013 (100-500μg)、サブタイプ3 (S1P3)阻害薬のCAY10444 (50-200μg)とCMY5541 (50-200μg)をカテーテルから10μL投与した。コントロール群には溶媒の50%DMSO溶液を10μL投与した。投与30、60、120、180、240分後に①フォン・フライ試験(機械痛覚過敏を評価)、②プランター試験(熱痛覚過敏を評価)、③コールドプレート試験(冷痛覚過敏を評価)を行った。その結果、いずれの薬物も①の痛覚閾値、②の逃避反応潜時、③の逃避反応潜時に影響を与えなかった。以上の結果から髄腔内及び脳室内に投与したS1P2, S1P3受容体阻害薬は機械および冷痛覚過敏を抑制しないことが分かった。脊髄と脳のS1P2, S1P3受容体は侵害受容伝達の調節に関与していない可能性が示唆された。
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