研究実績の概要 |
【研究目的】周術期低血圧が関連する周術期心筋傷害の発生機序および制御方法の開発が本研究の目的である。 【研究実施概要】ラットを用いて麻酔誘発性低血圧を導入した。麻酔導入はセボフルラン2%および4%を使用した。セボフルラン投与前において平均血圧は120mmHg前後であったが、セボフルラン投与後、2%投与群では80mmHg前後と導入前より30%以上の血圧低下を生じた。4%投与群では平均血圧60mmHg前後と麻酔前よりも50%以上の血圧低下を生じた。一般的に周術期低血圧は平均血圧が麻酔前よりも30%以上低下することと定義されており、いずれの群においても低血圧モデル として妥当と考えられた。2時間以上の麻酔誘発性低血圧単独群、麻酔誘発性低血圧+手術侵襲群で、心筋傷害の程度をトロポニンを測定し比較した。その結果, いずれの群においても低血圧を生じなかった群と比較して、トロポニン上昇を認めた。セボフルラン2%+手術群はセボフルラン2%単独群よりもトロポニン上昇の程度が大きかった。一方、セボフルラン4%+手術群では、セボフルラン4%単独と比較してトロポニン値は同等であった。 【考察と展望】麻酔誘発性低血圧単独でも心筋傷害が生じることが示され、手術侵襲により増幅される可能性が示唆された。一方、高濃度の吸入麻酔薬は臓器保護作用を介して心筋傷害を軽減した可能性がある。今後、心筋傷害および心筋ミトコンドリアレベルでの傷害に加え、HIF1-α、GSK-3β、MAPKの動態についてプロテオーム解析を行い、分子機序について検討を行う。
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