研究課題/領域番号 |
21K08979
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
山口 敬介 順天堂大学, 医学部, 教授 (10338410)
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研究分担者 |
長岡 功 順天堂大学, 保健医療学部, 特任教授 (60164399)
井関 雅子 順天堂大学, 医学部, 教授 (80221076)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慢性疼痛 / イリシン / サブスタンスP / 運動 / ミクログリア / アストロサイト / 炎症 |
研究実績の概要 |
超高齢化社会を迎え、慢性疼痛、認知症、サルコペニアなどの老年症候群患者の増加が社会的問題となっている。一方、高齢者への運動介入は、老年症候群の発症、死亡リスクを下げられることが広く知られている。運動時に骨格筋から分泌される生理活性物質であるマイオカインは、「骨格筋線維に発現し、そこから分泌されるサイトカインおよびペプチドで、傍分泌的・ 内分泌的に作用するもの」と定義されており、これまで運動(=筋収縮)によって骨格筋で合成され、細胞外に分泌されると認識されてきた。既に同定されているマイオカインには全身の代謝調節や抗炎症作用などの多数の生理作用を有するものが報告されており、近年注目されている。マイオカインの一種であるイリシン(irisin)は、海馬における神経細胞のシナプス可塑性に作用する脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現を誘導し、認知機能を高めることが報告されている。これらの現象は、イリシンが、神経原性炎症抑制に深く関与していることが予想される。 これまでに、神経伝達物質サブスタンスP (SP) が慢性疼痛や神経原性炎症に深く関わっていることを明らかにしてきており、「イリシンがSPのシグナル伝達系に作用して、抗炎症効果を介して鎮痛効果を発揮しているのではないか」という仮説をたてた。 マイオカインの慢性疼痛に対する効果を分子生物学的に解明し、慢性疼痛治療方法の確立に役立つことが期待できる。 本年度は、HMC3細胞において、SP刺激によりインターロイキン6, 8の産生増加が認められることを確認できた。それに対するイリシンの抑制効果は現在確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験スペースの移動に伴い、研究時間の確保が難しい時期があったため。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトミクログリアHMC3細胞におけるNK1受容体を介する細胞内情報伝達経路とイリシンの影響についてin vitroの検討を推進する。可能であれば、in vivoにおけるイリシンの影響について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は計画から遅れたものの、消耗品などは、過去に購入したものを流用できたため、予算を使い切るには至らなかった。次年度は、ELISAキットなどの消耗品を順次購入予定である。
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