研究課題/領域番号 |
21K08981
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
照井 貴子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (10366247)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 循環生理 / 麻酔 |
研究実績の概要 |
本研究では、近年急速に発展している分子イメージング技術を駆使し、心臓の心筋線維の最小ユニットであるサルコメアの収縮動態を高い時間・空間分解能でライブイメージングできる技術とで、小動物摘出心臓を心拍動下に顕微鏡観察できるex-vivoナノイメージング装置を駆使し、心筋の収縮・弛緩のメカニズムをナノレベルで解明する。 生命科学・医学研究において生体内の様々な制御メカニズムを解明するためには、in vitro のみならずin vivoでの分子メカニズムの解明が待たれるが、心筋研究においては、心臓自体が常に拍動し続けている臓器であるため、技術的に困難を極める。そこで、in-vitroからin-vivoイメージングへ研究を進めていく上で、非常に重要なex-vivoイメージング装置を開発し、本研究をより実質的かつ装置系に段階性を持たせて進められ、ex-vivoイメージング装置を実際に使用し、擬似生体内での心筋サルコメアの収縮・弛緩動態をイメージング可能となった。心拍を完全に制御できる装置である利点を生かし、心電図・血行動態情報、局所心筋細胞のCa2+濃度の同時測定を行い、詳細な心筋の収縮・弛緩の分子メカニズムの解明をねらう。 また、実際に臨床使用されている麻酔薬(セボフルラン、デスフルラン、プロポフォールなど)を加えて、様々な濃度での検討も行い、麻酔薬が心筋ナノレベルの収縮動態にどのように寄与するかをナノレベルで高精度の解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ex-vivoイメージング装置の摘出心還流システムの改良を行い、摘出心臓を還流させる灌流液の電解質組成をリアルタイムで確認できるシステムの検討を行っており、電解質組成(Ca2+、K+ etc…)を測定する装置系を検討中であり、近日中に購入し、灌流下ex-vivoイメージング装置の改良および拡張を行う予定である。また、麻酔薬においても新たな麻酔薬(レミマゾラム)が臨床使用されており、還流システムでの検討が現実的か検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
一般的に、心臓の心筋収縮自体は、いわゆる心臓のペースメーカー(洞結節)からの心拍により約1秒に1回の頻度で活動電位が生じ、心臓全体に伝搬する。その伝搬により心筋細胞内のCa2+イオン濃度が急激に上昇し、心筋細胞が収縮するといわれている。ex-vivoイメージング装置を用いることにより、その収縮様式について、詳細に観察することが可能となった。また、Ca2+イオン濃度変化のない状態での心筋細胞の動態についても検討できることが示唆された。除膜心筋収縮系サルコメアは,Ca2+濃度一定の条件下で自発的に振動し(SPOC:Spontaneous Oscillatory Contraction)、その振動数は動物種に固有の心拍数と相関することが報告されている(Sasaki et al. 2005)。また、心筋細胞に抗αアクチニン抗体-量子ドット複合体を導入することによりZ線をイメージングすることが可能であり、生理的な電気刺激頻度においてSPOCに類似した鋸波の振動波形が出現することが判明している(Serizawa et al. 2011)。今後は、膜電位感受性色素を細胞に導入させることなども併用し、すでに構築しているイメージング装置を駆使し、細胞レベルで確認されている心筋サルコメアの自励振動(SPOC)が、臓器レベルで確認されるかどうか、ex-vivoイメージング装置を用いて心筋細胞動態を詳細に観察できる系で検討する。さらに、ex-vivoイメージング装置の摘出心還流システムの改良を行い、摘出心臓を還流させる灌流液の電解質組成をリアルタイムで確認できるシステムの検討を行う。 また、実際に臨床上も使用している麻酔薬を様々な濃度で灌流液内に混和し、麻酔薬による心収縮・拡張への影響をリアルタイムに観察し、ナノレベルで検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ex-vivoイメージング装置の摘出心還流システムの改良を行い、摘出心臓を還流させる灌流液の電解質組成をリアルタイムで確認できるシステムの検討を行っており、電解質組成を確認するシステムを検討中であるが、未購入であるため。 また、麻酔薬に関する検討を行う予定であるが、薬剤に関して選択中であり、まだ購入に至っていないため。
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