研究課題/領域番号 |
21K08982
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高木 俊一 日本大学, 医学部, 准教授 (20308464)
|
研究分担者 |
北島 治 日本大学, 医学部, 助教 (20772776)
鈴木 孝浩 日本大学, 医学部, 教授 (60277415)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | ロクロニウム / プロポフォール / セボフルラン / レミマゾラム / 蛋白結合率 / 超遠心法 |
研究実績の概要 |
超遠心法によってアルブミンと結合したロクロニウムを安定して分離することに成功し、限外濾過法と同等の精度で蛋白結合率を測定することができるようになった。 麻酔薬は蛋白結合する薬剤が多く、蛋白結合率が高いことが知られている。現在主に臨床使用されている全身麻酔薬のうち、静脈麻酔薬であるプロポフォールの蛋白結合率は97-99%、レミマゾラムは92%というように蛋白結合は非常に高い。一方、吸入麻酔薬であるセボフルランは蛋白結合をしない。このように全身麻酔薬は薬剤によって蛋白結合率が大きく異なること、また吸入麻酔薬はロクロニウムの筋弛緩作用を増強する効果があることから、ロクロニウムの蛋白結合率に影響を及ぼす可能性が高いため、全身麻酔薬の影響を先ず検討することにした。 高齢者は対象症例が少ないために症例数を得るのに時間が掛かるため若年者(20-65歳)においてプロポフォール(n=30)、セボフルラン(n=30)、レミマゾラム(n=30)のロクロニウムの蛋白結合率への影響を検討した。結果は深い筋弛緩状態であるPTC1の時の蛋白結合率はそれぞれ、31.3(4.6)、30.2(5.7)、29.9(3.5)であり、浅い筋弛緩状態あるT1の時ではそれぞれ、30.3(4.5)、32.1(5.5)、31.7(4.2)、T2の時ではそれぞれ30.3(4.2)、31.3(4.6)、31.4(3.0)であった。術前アルブミン濃度は、それぞれ4.7(4.5-4.8)、4.4 (4.3-4.7)、4.4(4.4-4.8)であった。各麻酔薬によるロクロニウムの蛋白結合率、術前アルブミン濃度は、群間に有意差は認められなかった。この結果を踏まえた論文を現在投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
高齢者の手術で、麻酔導入時の気管挿管の際にのみ筋弛緩薬を必要として、手術には筋弛緩薬の追加投与を必要としない症例が少ない。加えて腎機能障害や肝機能障害症例は特に少ないため対象症例を得るのに時間を要するためである。
|
今後の研究の推進方策 |
高齢者の症例数が限られているため、研究項目を厳選して高齢者の残存筋弛緩に影響すると考えられる状態の検討を行う。 高齢者と若年者の比較を2つ研究を行う。一つは高齢者ではロクロニウム濃度変化が筋弛緩程度はアルブミン・ロクロニウム濃度に影響するかを調べるため、主要評価項目:アルブミン・ロクロニウム濃度(T2)、副次評価項目:性別、術前アルブミン濃度、T2からTOF0.9、1.0までの回復時間、総ロクロニウム濃度(PTC1、T1、T2、TOF0.9)、アルブミン・ロクロニウム濃度(PTC1、T1、TOF0.9)を検討する。もう一つは高齢者ではスガマデクス投与でアルブミン・ロクロニウム濃度や蛋白結合率は変化するかを調べるため、主要評価項目:スガマデクス投与20後のアルブミン・ロクロニウム濃度、副次評価項目:性別、アルブミン・ロクロニウム濃度(スガマデクス投与前、後5分、10分、15分)、総ロクロニウム濃度(スガマデクス投与前、後5分、10分、15分、20分)を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行が遅れているために、使用額を繰り越しとしたが、次年度は臨床症例によるデータ収集が増えるために、筋弛緩状態のデータ測定用の検査機器の購入およびロクロニウムと蛋白結合率測定に用いる超遠心やHPLCに使用する試薬やスピッツなどを購入する。
|