研究課題/領域番号 |
21K08990
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
赤根 亜希子 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (80571348)
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研究分担者 |
小西 裕子 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (60771970)
尾関 奏子 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (10547524)
田村 高廣 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (80612853)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プロポフォール / 食道がん細胞株 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は周術期に用いる全身静脈麻酔薬プロポフォールが細胞に与える影響について、細胞シグナル伝達物質であるカルシニューリンに着目し、まだ明らかになっていない作用機序の一端を調べることである。これまでに研究者らは多様なヒトがん細胞株や、日本人由来のヒト食道がん細胞株を用いてプロポフォールを暴露し、増殖や細胞死の影響を精査した。その結果、臨床使用濃度のプロポフォールは、暴露から2日以後に複数の食道がん細胞株の細胞死を引き起こすことを明らかにした。さらにこの細胞死の機序について精査するため各種カスパーゼ活性を確かめたところ、ミトコンドリアを介して放出されるcaspase-9ではなく、細胞死実行タンパク質caspase-3が直接細胞死に関与していることを明らかにした。さらに細胞死回避をした細胞株ではカルシウム濃度が低下することを観察した。また培養細胞株を用いた実験ではプロポフォールの溶媒に細胞への影響が大きく変わることを明らかにし論文に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに研究者らは日本人由来の複数のヒト食道がん細胞は、エタノールを溶媒としたプロポフォールによって、2日以後に複数の食道がん細胞株の細胞死を招くことを見いだした。これらの細胞死について各種カスパーゼ活性を確かめたところ、ミトコンドリアを介して放出されるcaspase-9ではなく、細胞膜由来の細胞死実行タンパク質caspase-3によって直ちに細胞死に至ることを明らかにした。一方で溶媒をに替えるとプロポフォールによる細胞膜への障害性が高まり、暴露直後から細胞膜を崩壊して細胞死を生じることを同定した。以上のように概ね計画通り進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果から、プロポフォールの溶媒の違いにより適切な細胞反応を観察できる手順を確かめることができた。また試験した多様な食道がん細胞株ではカルモジュリンの活性は高まることを確認しているが、その下流域のシグナルを特定することはできていない。そこで本研究ではプロポフォール暴露後の生体反応を観察するため、低酸素誘導因子に関わるG3BP1を過剰発現したクローンなどを使用してプロポフォール暴露後に細胞膜表面で生じる変化を観察する。特にこの推進方策には、実験補助員を1名得て実験を押し進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に使用額が生じた理由は細胞株の入手に他研究者から協力を得られてMTAを取り交わして入手することができたため、取得費用を押さえられた。またプロポフォールの溶媒と細胞死についての論文作成を優先したため。
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