研究課題/領域番号 |
21K08995
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
賀来 隆治 岡山大学, 医歯薬学域, 講師 (50444659)
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研究分担者 |
松岡 義和 岡山大学, 大学病院, 助教 (20509434)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慢性疼痛 / グルタミン酸トランスポーター |
研究実績の概要 |
Glutamate transporter-1(GLT-1) はアストロサイト特異的グルタミン酸トランスポーターであり、シナプス間隙のグルタミン酸濃度の恒常性を保つ。既存の論文では GLT-1 と慢性痛の関係が研究され、in vitroで Primary astrocyte にα1受容体作動薬を投与すると用量依存性にGLT-1 発現が抑制すること、in vivo で modified Spared Nerve Injury(SNI) モデルラッ トの両側脊髄で GLT-1 の発現が低下すること、両側脊髄でノルアドレナリンが一過性に増加すること、健側でも疼痛閾値の低下 (mirror image pain, MIP) が生じることが報告されている。MIPの機序として脊髄アストロサイトの GLT-1 発現とアドレナリン受容体の関係を検討した。in vitroの結果では、ノルアドレナリン3μM投与下にフェントラミンを投与すると、GLT-1 発現は完全に回復したが、α1A, α1D 受容 体阻害剤投与では、部分的な回復にとどまった。in vivoの結果としては、モデル作成 3 日目に両足底の疼痛閾値低下を認めた。生理食塩水群では10日目まで両側疼痛閾値は改善しなかった。α1受容体阻害剤200μg群では患側疼痛閾値の変化を認めないが、10日目の健側疼痛閾値は改善した。結論としては脊髄アストロサイトのα1受容体刺激によるGLT-1発現の低下がMIPの機序に関与することが示唆された。これらの結果をまとめて、Phentolamine-induced spinal GLT-1 upregulation improve mirror image pain in SNI model rat. Acta Med Okayama 2022 Vol.76, No3, pp.255-63として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験として、2つのラット術後痛モデルにおける脊髄GLT-1発現の変化、ノルアドレナリン量の定量およびアドレナリンα受容体阻害剤による術後遷延痛の変化を検討することを目的としている。足底筋膜切開による術後痛モデル(Brennanモデル)では術後5日で疼痛域値は回復するが、皮膚/筋肉切開および開創(skin/muscle incision and retraction, SMIRモデル)では術後約3週間にわたり疼痛閾値の低下を示す。初年度はこれらのモデルの脊髄での遺伝子発現の違いとノルアドレナリン量の変化につき検討する予定であった。結果について学術論文として報告することが出来ており、順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はアドレナリンα受容体阻害剤による術後遷延痛の変化を検討する予定である。特に先行鎮痛(Preemptive Analgesia)による術後遷延痛の変化に注力して研究を継続する。(skin/muscle incision and retraction:SMIR)モデルでは作成時に坐骨神経を視認できるため、モデル作成と同時に局所麻酔薬による坐骨神経ブロックが可能となる。長時間作用性局所麻酔薬ロピバカインの投与による遷延性疼痛の変化の検討、ならびに上記の生化学的分析を行う。 これらの結果に関しても、学会発表ならびに論文作成を行う予定である。
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