研究実績の概要 |
Glutamate transporter-1(GLT-1) はアストロサイト特異的グルタミン酸トランスポーターであり、シナプス間隙のグルタミン酸濃度の恒常性を保つ。GLT-1 と慢性痛の関連として、in vitroで Primary astrocyte にα1受容体作動薬を投与すると用量依存性にGLT-1 発現が抑制すること、in vivoでmodified Spared Nerve Injury(SNI)モデルラッ トの両側脊髄でGLT-1 の発現が低下すること、両側脊髄でノルアドレナリンが一過性に増加すること、健側でも疼痛閾値の低下 (mirror image pain, MIP) が生じることが報告されている。 我々は令和3年度、MIPの機序として脊髄アストロサイトの GLT-1 発現とアドレナリン受容体の関係を検討した結果、in vitroでは、ノルアドレナリン3μM投与下にフェントラミンを投与すると、GLT-1 発現は完全に回復したが、α1A, α1D 受容体阻害剤投与では、部分的な回復にとどまった。in vivoでは、モデル作成3日目に両足底の疼痛閾値低下を認め、α1受容体阻害剤200μg投与群では患側疼痛閾値の変化を認めなかったが、10日目の健側疼痛閾値は改善した。この結果を、Acta Med Okayama 2022 Vol.76, No3, pp.255-63に報告した。 令和4年度には、Spinal Nerve Ligation(SNL)モデルに対して同様の実験を行い、脊髄における神経伝達物質であるBrain-derived neurotrophic factor(BDNF)の変化について検討した。 令和5年度は、BDNFに対する様々なノックダウン方法を検討した。これまで報告してきたデコイを用いた方法に加えて、新たにアンチセンスの効果を検討した。
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