研究実績の概要 |
島葉、特にその後部は、末梢からの痛覚入力を受けて脳内情報処理を行うための起点として重要な脳領域である。しかし、主観的な疼痛を客観的に評価するにあたっては、島葉以外の脳領域の動態を可視化する必要がある。そのため、皮質内電極留置による脳波記録を行った島葉てんかん患者において、疼痛を自覚した発作と自覚しなかった発作の違いを皮質‐皮質間の機能的連関の指標(Weighted Phase-lag index)を用いて解析した。結果、後者では前頭葉においてアルファ帯域(8~13Hz)の周波数を介した機能的連関が高まっていることが分かった。アルファ帯域の脳波活動は疼痛の自覚に対して抑制的に働いているという仮説が過去の研究で提唱されているが、それを皮質内電極留置による脳波記録を用いて証明した貴重な結果であると考えられた。同結果は、国際学会(ECCN, European Congress of Clinical Neurophysiology 2023)で報告する予定である。
また、主観的な痛みの強弱・有無を簡便に定量化するため、海外の研究室(NeuroPain Lab.,Lyon, France)と共同で交感神経性皮膚反応(Sympathetic skin response=SSR)(自律神経を介した痛み‐覚醒反応)を用いた評価法を確立した。この結果は、国際誌に共著者として発表した(Salameh C,...Hagiwara K, et al. Neurophysiol Clin. 2022:436-445)。
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