研究課題/領域番号 |
21K09001
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研究機関 | 福岡国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
萩原 綱一 福岡国際医療福祉大学, 看護学部, 准教授 (00585888)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 痛覚情報処理 / 島葉 / 皮質ネットワーク / 電気生理学的指標 |
研究実績の概要 |
シルビウス裂奥深くに位置する島葉後部は、末梢からの痛覚入力を受けて脳内情報処理を行うための起点として重要な脳領域であり、疼痛緩和を目的としたニューロモジュレーションのターゲットとして注目されている。申請者は耳介後部の経頭蓋直流電気刺激(前庭神経刺激)を介して島葉を賦活することにより、末梢痛覚線維の刺激による実験的疼痛を軽減させ、頭皮上で記録される誘発電位も抑制することに成功した。しかし、疼痛の有無・強弱については主観的な評価に頼らざるを得ないことに難しさを感じた。主観的な疼痛を可視化することは、痛み研究の分野において主たる課題であり、そのためには島葉を含む脳内ネットワークの動態を可視化することが必要である。そこで、島葉を起源とするてんかん発作時疼痛では発作毎に疼痛の自覚の程度に差があることに着目した。外科的切除術前の焦点診断目的に皮質内脳波記録を施行した島葉てんかんの患者を対象に、(A)疼痛を自覚した発作と(B)自覚しなかった発作の違いを皮質‐皮質間の機能的連関の指標(Weighted Phase-lag index)を用いて解析した。結果、前者(A)に比し後者(B)では、疼痛自覚前4秒間のベースラインにおいて前頭葉を中心にアルファ帯域(8~13Hz)の機能的連関が高いことが分かった。ベータ帯域やガンマ帯域においては有意差を認めなかった。アルファ帯域の脳波活動は疼痛の自覚に対して抑制的に働いているという仮説が提唱されているが、それを皮質内脳波を用いて直接的に証明した貴重な結果であると考えられた。同結果は、ヨーロッパ臨床神経生理学会(ECCN, European Congress of Clinical Neurophysiology 2023)で報告し、論文化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
頭蓋内脳波データの取得には、皮質内電極留置による脳波記録を行っているてんかん患者を新規にリクルートする必要があるが、コロナ流行下の影響も大きく、さらに脳外科医が不在の状況となっており新たなデータ取得が難しい状況が続いている。そのため、既存のデータを用いて可能な解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
皮質内電極留置による脳波記録を行っているてんかん患者が少ないため、既存のデータの活用および解析の深化をはかる。福岡国際医療福祉大学作業療法学科の中薗寿人の協力を得てより詳細な解析を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ワークステーションやデータ保存用のハードディスクを購入予定であったが、本年度は解析ソフトウェアの購入を優先しため、残金が生じた。翌年度以降、必要性に応じて、追加解析ツールの購入あるいはワークステーションの購入費に充てる予定である。
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