研究課題/領域番号 |
21K09003
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
青江 知彦 帝京大学, 医学部, 教授 (90311612)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オピオイド受容体 / 小胞体ストレス / 痛覚過敏 / オピオイド耐性 |
研究実績の概要 |
オピオイド受容体 (MOP) は7回膜貫通型の複雑な構造を持ち、その立体構造の形成、細胞表面への輸送には小胞体機能が深く関与している。外因性のオピオイドの連用や、慢性的な疼痛刺激による内因性オピオイドペプチドの持続分泌によってMOPの内在化、分解が促進される。また、小胞体機能不全によって細胞内情報伝達の変化が生じ、MOP発現神経細胞のオピオイド刺激による細胞内情報伝達も影響を受ける可能性がある。小胞体機能を補完する小胞体化学シャペロンの投与は、小胞体ストレス反応の抑制、細胞内情報伝達の正常化、小胞体での機能的なMOPの立体構造の形成、細胞表面への輸送の促進を通じて, MOP発現神経細胞が関与する上行性痛覚伝達系と下行性疼痛抑制系の機能不全を解消して、オピオイド耐性や痛覚過敏を改善する可能性がある。本研究ではオピオイドによる痛覚過敏の分子機構を培養細胞と遺伝子変異マウスを用いて、次世代シークエンサー技術による遺伝子解析やタンパク質のウエスタンブロットなどの分子生物学的解析を行なっている。野生型培養細胞SH-SY5Y細胞では、オピオイド受容体刺激による小胞体ストレス関連タンパク質の変化が観察されている。また、野生型マウスでは、小胞体化学シャペロンの投与によって、オピオイドによる痛覚過敏が緩和される結果を得ている。今後SH-SY5Y細胞の遺伝子変異細胞株を作製し、オピオイドによる痛覚過敏の小胞体ストレスとの関連を分子生物学的にさらに解析する。また、小胞体分子シャペロン遺伝子変異マウスを用いて、オピオイドによる痛覚過敏や耐性形成が実際に個体レベルで小胞体機能とどのように関連するのかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養細胞での実験 SH-SY5Y細胞はMOPを発現するヒト neuroblastomaである。ヒトKDEL受容体遺伝子は3種類報告されているが、主にKDELR1遺伝子由来の受容体が機能を担っている。CRISPER/Cas9システムによるゲノム編集によってKDEL受容体第7 膜貫通領域にある193番目のアミノ酸D (aspartic acid) をコードしているDNAを”GAT ”から”AAT ”に1塩基置換して、アミノ酸DをN (asparagine)に変異させた安定細胞株を作成する。KDEL receptor 1 Double Nickase Plasmidを利用する。 SH-SY5Y細胞とD193N変異SH-SY5Y細胞を培養し,刺激実験を行う。現在遺伝子導入によって変異細胞を作成中であるが、手技的に難しく、熟練を要する。 野生型マウスと遺伝子変異マウスでの解析 野生型マウス (C57BL/6、10 週齢)に種々の薬剤を投与してオピオイド痛覚過敏形成を検討した。今後変異BiPノックインマウスでの痛覚過敏形成を検討する。遺伝子変異マウスは自家繁殖しており、週齢、オスメスを揃えて必要数を確保するのに時間を要する。 また、COVID-19の流行により、実験環境、勤務状況、物品供給が円滑に進まず、様々な制約があった。
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今後の研究の推進方策 |
今までの実績、経験を活かして、当初の研究計画に沿って、研究を進める。SH-SY5Y細胞とD193N変異SH-SY5Y細胞を培養し,刺激実験を行う。また、野生型マウス と変異BiPノックインマウスに種々の薬剤を投与してオピオイド痛覚過敏形成を検討する。痛覚検査後に吸入麻酔下にこれらのマウスから脳、脊髄を採取する。下行性疼痛抑制系経路において MOP発現神経細胞が集積する中脳水道周囲灰白質を含む脳幹部のKDEL受容体、小胞体分子シャペロンBiP、チロシンリン酸化Src、チロシンリン酸化GSK3βの発現をウエスタンブロットで検討する。またMOP発現神経細胞におけるこれらの分子の細胞内局在を二重免疫蛍光染色で確認する。さらに神経細胞とミクログリア、アストロサイトなどにおける神経炎症についても組織学的に検討する。一部の個体から得た脳、脊髄からはDNA、RNAを抽出し、次世代シークエンサー技術による遺伝子解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は概ね計画に沿って進行しているが、COVID-19流行に伴い、出勤できない時期や、物品の納品が遅れたことなどがあり、一部の実験の実施を延期し、遅れが生じている。今年度も計画を継続して行う。
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