研究課題/領域番号 |
21K09006
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝浩 日本大学, 医学部, 教授 (60277415)
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研究分担者 |
高木 俊一 日本大学, 医学部, 助教 (20308464)
北島 治 日本大学, 医学部, 助教 (20772776)
佐野 誠 (SanoMakoto) 日本大学, 医学部, 准教授 (70339323)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | がんサポーティブケア / 担がんモデルマウス / 麻酔薬 / がん性疼痛 |
研究実績の概要 |
近年,がんに対する治療方針の多様化から,患者個人に適したサポーティブケアが求められている。対象としては,がん性疼痛や悪液質,体重減少,うつや睡眠障害,嗅覚・味覚障害など多岐に渡る。われわれは抗うつ薬のデュロキセチンが膵癌モデルに対して抗腫瘍効果を示し,がん性疼痛の緩和や筋肉・脂肪萎縮の軽減,食欲低下・体重減少の遅延,生存期間の延長にも寄与することを報告してきた(PAIN, 2020)。一方で,より良いがんサポーティブケアを行うためには,その他の未承認麻酔薬の探索も必要である。本研究では,がん性疼痛や悪液質に加えて,心理社会的ストレスと嗅覚障害を新たな研究対象とし,がんサポーティブケアのあり方を担がんモデルを用いて検討する。当該研究で得られた結果により,がん患者への早期介入が可能となり,患者の生活の質(QOL)の向上のみならず,生存期間の延長にも寄与できると期待される。 当該年度においては,膵癌細胞株に対して抗腫瘍効果を示すミダゾラム(向精神薬)を見出し,膵癌の自然発症モデルに対するミダゾラムの効果を検討した。その結果,ミダゾラムが癌のみならず,腫瘍の進展に関わる癌関連線維芽細胞(CAF)の増殖を抑制し, 腫瘍関連好中球(TAN)や腫瘍関連M2様マクロファージ(M2様TAM),骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)の局所浸潤を抑制すること,疼痛スコアを緩和することを明らかにした(British Journal of Anaesthesia 2022; 128(4): 679-690)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに膵癌細胞株に対して抗腫瘍効果を有するミダゾラムを見出し,膵癌モデルマウスにおいてもミダゾラムの抗腫瘍効果ならびに抗炎症効果,疼痛緩和作用を示すことができた。ミダゾラム以外にも興味深い候補麻酔薬を見出しており,膵癌マウスへの投与を継続する。また,心理社会的ストレスや嗅覚異常の改善,自発運動によるがん悪液質の改善も検討しており,研究計画全体としては順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
①がん性疼痛に対する新たなサポーティブケア(鈴木,佐野): 膵癌マウスに対するミダゾラム以外の候補麻酔薬の効果を明らかにする。 ②心理社会的ストレスに対するサポーティブケア(高木,佐野):担がんモデルマウスの単頭飼育群と多頭飼育群における疼痛スコアリングをほぼ終えるため,病理組織学的な解析(腫瘍や炎症免疫細胞への影響)に加えて,サイトカインレベルやストレスホルモンの動態を詳細に解析する。 ③嗅覚異常の改善(鈴木,佐野):担がんモデルにおける埋没ペレットテストをほぼ終了したため,次に脳内アミンの変化をHPLC により定量し,嗅覚過敏症との因果関係を検討する。 ④麻酔薬と自発運動によるがん悪液質の改善(北島,佐野):担がんモデルマウスへの候補麻酔薬投与に加えて輪回しケージでの自発的運動を促すことで,悪液質(筋萎縮)軽減の程度や腫瘍への炎症免疫細胞浸潤の程度,血漿サイトカイン,生命予後への影響を検討する。
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