研究課題/領域番号 |
21K09008
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
前川 邦彦 北海道大学, 大学病院, 助教 (50439189)
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研究分担者 |
和田 剛志 北海道大学, 医学研究院, 助教 (30455646)
山川 一馬 大阪医科薬科大学, 医学部, 准教授 (50597507)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | PICS / CyTOF / LUMINEX / サイトカイン / 臓器障害 / 敗血症 |
研究実績の概要 |
敗血症モデルとして盲腸結紮穿孔(CLP)と、当研究室で新たにモデルとしての妥当性を検証したfecal suspension intraperitoneal injection(FSI)モデルを作成し、①生存率評価、②サイトカイン/ケモカインのLUMINEXによる網羅的測定のための血漿検体採取・保存、③Cytometry by time-of-flightにより血中免疫細胞評価のための血液検体処理・保存、④臓器障害評価のための肺、肝、腎、脾の摘出、保存、を行った。 1-①:生存率はCLP、FSIでそれぞれ77.5%、CLPで67.5%であり、生存したマウスに対して敗血症誘導1か月後にリポポリサッカライド(LPS)10mg/kgの投与をおこなった。sham損傷後LPS投与では、31%のマウスが死亡したが、予想に反して敗血症後マウスに対するLPS投与ではCLP、FSIともに死亡は確認されなかった。病態機序解明のため、上記②-④を行い、まず免疫学的機序解析のため③の検体測定を行ったが、検体処理過程で実施者の家族にCOVID-19陽性が判明し処理継続が不能となったため、CyTOF用の検体の大半が使用不能となった。そのため、最初からの実験やり直しを検討している。 また敗血症後の免疫変化はLPSによる二次性の侵襲に対して保護的に働いている可能性が示唆されている。実験前の仮説と異なる結果であり、二次性の侵襲をLPS投与ではなく、肺炎を誘導するなど感染症による変化を確認することを検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通りにおおむね順調に進んでいたが、研究実績の概要に記したようにCOVID-19による不測の事態が生じ予定していた実験系を最初からやり直すこととなった。本研究の中心的役割を担うCyTOFの完全な結果を得るためのやむを得ない対応であるが、その他の実験については先の一連の研究で収集した検体での測定・評価継続が可能であり、大きな研究の遅れとはとらえていない。 CyTOFについては、共同研究先の米国ボストンからの抗体輸入、検体の輸送、染色、測定などすべての過程が確立しており、残った半分の検体を用いて測定を行った。
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今後の研究の推進方策 |
一連の実験系をやり直すと同時に、研究実績の概要に示す②④の測定・評価を行う。CyTOF測定用の血液検体の収集が完了したのちに、改めてCyTOF測定を行う。一度目の実験における半数の検体を測定したが、新たに測定する検体に十分の残存抗体があることを確認している。データ解析においてはCytobankによるデータ解析を行っていたが、より機能が向上し年間使用料の安価なOMIQを使用することとしたが、日米のOMIQ関係者からのサポート体制も万全であり、多次元データ解析を進めているところである。研究実績の概要①~④の完了をもって、PICSの免疫学的病態機序の一端が明らかになると予想しており論文執筆を予定する。執筆と並行して、免疫応答修飾因子の一つ、Toll-like receptor9アゴニストのCpG-ODNのPICS病態に与える免疫学的評価を行う。敗血症誘導2時間後にCpG-ODN2mg /kgを投与したマウスにおいて、前述と同様の実験を行う予定としている。また、二次性感染症を腹膜炎ではなく肺炎に置き換えての同様の実験も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
LUMINEXによる網羅的サイトカイン測定において、当初の計画より多くのアナライトを測定することとなり、高額の測定キットを購入する必要が生じたため前倒し請求を行ったが、若干の値引きがあったため残額が生じた。この次年度使用額は、今後の研究の推進方策に記載した、Toll-like receptor9アゴニストのCpG-ODNのPICS病態に与える免疫学的評価、敗血症後二次性肺炎における実験に使用予定である。
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