研究課題/領域番号 |
21K09009
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
岡田 基 旭川医科大学, 医学部, 教授 (80431427)
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研究分担者 |
藤田 智 旭川医科大学, 医学部, 名誉教授 (10173428)
黒嶋 健起 旭川医科大学, 大学病院, 助教 (30898408)
川口 哲 旭川医科大学, 医学部, 助教 (60814217)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 敗血症 / β3受容体 / CLP / S1P / Fingolimod |
研究実績の概要 |
敗血症など大きな生体侵襲が加わると、systemic inflammatory response syndrome (SIRS)と呼ばれる炎症性メディエーターが産生される病態になると同時に、抗炎症性サイトカインなどが産生され、細胞機能が低下し宿主の全身状態により多臓器不全に陥る。この際、心臓のエネルギー代謝機構が脂肪酸代謝から変化する、いわゆる、メタボリックスイッチをきたすと考えられている。 β3アドレナリン受容体(B3AR)は脂肪酸代謝に関連し、心不全で発現が増加するが、敗血症モデルにおいてB3AR遮断により、心機能と生命予後を改善させることを報告した。一方、脂質メディエーターであるスフィンゴシン1リン酸(S1P)は敗血症や心不全で血中濃度が低下することが報告されている。一方、FingolimodはFDAが承認したS1PR標的薬でリンパ球上のS1PR1の機能的アンタゴニストとして作用し、敗血症でのサイトカインの産生を抑制する可能性が期待できる。 我々の作成した盲腸結紮穿孔(CLP)マウスは24時間で50%以上が死亡することを確認しているが、Fingolimod投与群の24時間生存率は優位に高かった。また、心エコーによる心機能評価では, CLPによる左室内腔の拡大と左室駆出率の低下の改善を認めた。心筋組織におけるPCRにおいてIL-6, TNF-aなどのサイトカインの発現の低下、及び、S1P及びスフィンゴシンキナーゼSPHK1の発現低下の抑制を認めた。S1Pの刺激によるGiの活性化は、B3AR刺激と同様にPI3Kを介して、Akt, Rac, Ras-ERK, そしてPLCを活性化することが明らかになった。 多発性硬化症の治療薬として認可されているFingolimodの敗血症への有効性が示唆され、臨床応用が期待できると考えられた。当初の予定ではB3ARノックアウトマウスによる実験を予定していたが、購入できずFingolimodでの実験を優先した。最終年度は計画通り遂行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID19感染症での動物実験の制限。特に、B3ARノックアウトマウスの購入ができなかったことが大きい。また、臨床業務の増加による研究へのエフォート率の相対的低下も影響した。
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今後の研究の推進方策 |
研究分担者の寄与率の増加が期待できること、B3ARノックアウトマウスの購入を予定していることなどより、計画の進捗の回復が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノックアウトマウスの購入が予定通り行われなかったために購入費用が繰り越された。令和5年度に購入予定である。
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