研究課題/領域番号 |
21K09019
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大西 光雄 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (70597830)
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研究分担者 |
松浦 裕司 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (10791709)
戸上 由貴 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50866936)
細見 早苗 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (90644005)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 爆傷 / 衝撃波 / 頭部外傷 / 行動生理学 / 脳神経損傷 |
研究実績の概要 |
本研究では卓上型衝撃波作成装置を用いて、ラットに対する軽傷頭部外傷モデルを作成し、軽傷頭部爆傷が脳へ与えるダメージの影響を評価することを目的としている。我々のグルーブではこれまでにラットの頭部に衝撃波を与え、肉眼的及び顕微鏡的にも出血を来たしていないものを軽傷と定義し、軽傷頭部爆傷ラットが認知機能障害及び抑うつ症状を起こすことを行動生理学的評価により明らかにし、非常に軽微な損傷が遅発性(受傷2週間程度経過したのち)に海馬に生じていること、その原因として炎症細胞(マクロファージの集積)が同部位に確認され、神経の変性に発展している可能性があることを明らかにしてきた。この脳のダメージをさらに詳細に評価し、その影響を軽減するための研究が主たる研究目標となっている。しかし、下記の進捗状況に示すように、研究が遅れている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当教室では2015年から衝撃波装置の開発に着手し、2017年から軽傷頭部爆傷モデルの作成に取り組んできたが、本年は衝撃波装置の不具合により、以前と同じ環境下、同じ設定で衝撃波をラット頭部に当てたところ即死してしまった。 精査すると、同じ条件でも以前より強い圧が出るようになってしまっていることが判明した。元々のモデルでは646.2±70.3 kPaの圧であったのに対し、本年度は900から1000kPaが発生しており圧超過をおこしていた。 以前と同じ圧の衝撃波を作成するための調整を開始した。圧調整のためにガス充填圧を10MPaから徐々に下げていったが衝撃波Peak圧はあまり変わらず調整困難であった。次にアルミ板の厚みを3mm→2mmと薄くしてみるとPeak圧は430kPaまで下がってしまい、過去の衝撃波より弱い圧となってしまうことから、これも調整方法としては適さないと判断した。アルミ版の材質はそのままとして、焼きなましをして少し柔らかくしたものを使用すると590kPa前後となり、軽傷頭部爆傷作成時と同様の圧を出せるようになった。 この焼きなまし加工したアルミ版を用いてラットに衝撃波を当てると直後に死亡することはなく、受傷2日目から3日目にかけて体重減少が認められた。Y迷路では空間認知機能の低下が確認できたことから、軽傷頭部爆傷を再現するに至ったと考えている。次年度より血液や髄液採取をして追加解析する予定としている。
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今後の研究の推進方策 |
行動生理学底に以上をきたす動物モデルの作成に成功したが、衝撃波発生装置の経年変化か、衝撃波発生に使用するアルミ板の質が変わったのか、原因を探りながら進めざるを得ないために研究が遅れている。 現在、再現性が確認できる状況になってきたので、遅れを取り戻すべく研究を進める予定である。 本研究における動物モデルは、当初は異常がないように見えるが2週間程度で行動異常をきたす世界的にも注目すべきモデルであると考えている。脳の一部に炎症細胞の集積が発生し、同部分において神経細胞に変性をきたすことがその本質であると考えているが、軽微な頭部外傷後の病態解明・治療法の開発に資する研究として継続していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に遅れが生じている。衝撃波発生装置の衝撃波発生エネルギーが当初より大きくなっており、その原因究明・調整に多大な時間を要した。そのため計画より大幅に遅れることとなり、研究を継続するために次年度の使用額が生じた。原因・調整は進んでおり、研究自体を進めることは可能となっている。
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