研究課題/領域番号 |
21K09022
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
朱 鵬翔 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (40380216)
|
研究分担者 |
阪中 雅広 愛媛大学, 医学部, 研究員 (60170601)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 軽度外傷性脳損傷(MTBI) / インフラマソーム / 白質損傷 / 高次脳機能障害 / アストロサイト |
研究実績の概要 |
昨年度(令和三年度)では反復性軽度外傷性脳損傷(rmTBI)モデルマウスを用いて、損傷後脳内の組織変化と高次脳機能障害の関連性を確かめた。マウスの頭部に一日一回、合計10回の落錘により脳損傷を与えた一週間、一か月と三か月後、オープンフィールドと水迷路などの行動実験が行われた。rmTBI後3か月後、WT マウスに比べて、ASCノックアウトマウスがより優れた記憶能力と安定した精神状態を示した。脳組織の損傷を確認するために、rmTBI 後マウスの脳をELISA法、クリューバー・バレラ染色、HE染色と免疫組織化学法で調べた。その結果、白質の損傷がrmTBI後1週目から広範囲で認められるが、 rmTBI三か月後ではWTマウスに比べると、ASC KOマウス脳組織の白質の損傷は回復傾向が見られた。活性化したグリア細胞もrmTBI後一週目からマウス脳内の広範囲で確認されたが、3か月目で、WTマウスに比べてASCノックアウトマウス脳内の活性化グリア細胞が減少した。ELISA法で損傷した脳組織を調べた結果、WTマウスに比べて、ASCノックアウトマウスの脳内のIL-1βとTNFαの発現は有意に減少した。以上の結果から、rmTBI後ASCノックアウトマウスの脳内でIL-1βとTNFαなどの炎症性サイトカインの発現がWTマウスより減少した、グリア細胞の活性化が抑制され、神経炎症の進展が阻止された。活性化したグリア細胞は、神経細胞だけではなく、オリゴデンドロサイトとシナプスにも影響を与える。ASCノックアウトマウスでは、rmTBI後の神経炎症の進展が阻止され、損傷した白質が回復し、高次脳機能障害が改善されたと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究目標が、rmTBIにより白質損傷においてオリゴデンドロサイトの変性と再生が、神経炎症特に活性化したグリア細胞との関与を検討すること。昨年度、ASCノックアウトマウスとWTマウスを用いで、rmTBIモデルを作成した。水迷路とオープンフィールドなどの行動実験で記憶障害と不安状態などの高次脳機能障害が確認された。rmTBIを受けたマウスの脳組織を調べた結果、脳内炎症を抑えることにより、白質損傷が回復され、高次脳機能障害が軽減されることが確認された。これらの結果から、rmTBIにより高次脳機能障害と白質損傷、脳内炎症との関連性の解明を期待できる。コロナ禍のなか、研究室の出入りが何回も制限されたから、MRIによる脳損傷の確認と長期飼育実験ができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度の結果を踏まえて、今年度はグリア細胞特にアストロサイトの活性化がオリゴデンドロサイトの変性と再生への影響を調べることが目標とする。ASCノックアウトマウスとWTマウス由来のグリア細胞とオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を共培養して、グリア細胞がOPCに及ぼす影響を解明する。さらにNigericinを投与により活性化したグリア細胞がOPCに及ぼす影響を調べる。Culture inserterを用いるとグリア細胞とOPCは直接接触しないので、medium中のサイトカイン、エクソソームなどを調べることによりOPC分化影響する因子と神経変性誘発する因子の解析が可能になると期待される。昨年度できなかった長期飼育実験とMRIにより脳損傷の確認も今年度実施する予定。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由:コロナ禍のなか、研究分担者の大学研究室の出入りが何回も制限された。予定していた冷凍胚を起こしてからの長期飼育実験ができなかった、またMRIによる脳損傷の確認も実施できなかったため、その施設使用料と関連費用が発生しなかった。 使用計画:今年度では、コロナでも研究中止しないように、すべての実験を大学の常勤スタッフにより行わる。昨年度出来なった長期飼育実験とMRIにより脳損傷の確認を今年実施する予定である。
|