研究課題/領域番号 |
21K09023
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
林 美鈴 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (60870087)
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研究分担者 |
神里 興太 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10554454)
渕上 竜也 琉球大学, 病院, 講師 (10381211)
垣花 学 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20274897)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸管虚血再灌流障害 / 一酸化窒素 / 血管内皮 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
マウス腸管虚血再灌流障害を野生型および肥満・糖尿病型マウスにおいて作成し、虚血時間が再灌流48時間後の生存率に与える影響を検討した。この結果、術後48時間の死亡率50%をきたす虚血時間は、野生型で35.5分、肥満・糖尿病型で18.5分であった。肥満・糖尿病型マウスでは、短時間の腸管虚血によって再灌流障害後の生存率が低下することを確認した。肥満・糖尿病を有するいわゆる代謝症候群が全身の動脈硬化性病変・血管内皮機能不全を引き起こすことで腸管虚血再灌流障害の重症化が起こるという仮説を立てた。 次に、レーザー血流計で腸管血流を測定した。肥満・糖尿病型マウス術後48時間の死亡率が75%となる虚血時間である23分を虚血時間に設定し、腸管虚血直前・虚血中・再灌流後の腸管血流を評価した。その結果、糖尿病・肥満型マウスでは、野生型マウスと比較し、虚血中(再灌流直前)・再灌流後の腸管血流量が低いことを確認した。腸管血流量低下が肥満・糖尿病型マウスの生存率低下につながる可能性が示唆された。 血管拡張作用を持つ一酸化窒素NOが病態整理へ関与しているとの仮説に基づき、野生型および肥満・糖尿病型マウスに手術5日前から亜硝酸ナトリウム水溶液を自由飲水させた。術後48時間の死亡率75%をきたす虚血時間(野生型:38分、肥満・糖尿病型:23分)で虚血・再灌流を行った。その結果、術後48時間の死亡率は、亜硝酸ナトリウム飲水群で死亡率が低下する傾向を認めたが、統計学的な有意差を認めなかった。亜硝酸ナトリウム飲水がNOを補完できなかったのか、病態生理へNOが関与しているという仮説に問題があるのか、今後検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度に計画していた研究内容を予定通り遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
亜硝酸ナトリウム水溶液飲水によって全身のNOを補完することで腸管虚血再灌流障害の予後改善が見込まれるのではないかという仮説に基づいて本研究計画を立案した。しかし、亜硝酸ナトリウム水溶液飲水は、腸管虚血再灌流障害の予後改善に至らなかった。一方で、虚血中・再灌流後の腸管血流量は有意に肥満・糖尿病型マウスにおいて低下しており、この腸管血流量低下をターゲットとした治療が、腸管虚血再灌流障害の予後改善につながる可能性がある。 今後は、まず腸管虚血再灌流後の小腸組織を用いて、野生型および肥満・糖尿病型における小腸粘膜障害の重症度と差異を調べる。さらに腸管における炎症性サイトカインや内皮型NO合成酵素(eNOS)発現量など、腸管血流量低下と関連する可能性のある項目を、免疫組織学的・分子生物学的手法を用いて検討する予定である。
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