血液を含む体液中に、cell-free mitochondriaが存在することが報告され、各種の病態との関連について検討が行われている。加えて、筋肉等から抽出分離したmitochondriaそのものの移植が、ある種の病態や臓器不全に対して有効な治療法となりうるとする報告もある。熱中症においては高体温のために細胞内ミトコンドリアが障害を受けることは容易に想像される一方で、血中を含む細胞外に存在するミトコンドリアが、どのような意義を有し、熱中症においてどのように変化するのか、細胞でのエネルギー産生・代謝以外の面での量的・機能的変化は全く不明である。そこで我々は、cell-free mitochondriaのうち、細胞膜に被覆され、細胞外小胞として存在するcell-free mitochondria(cf-Mito EVs)に注目し、熱中症の病態との関係について検討した。 ACDにて採血後、血小板の活性化を回避(PG-I2を添加)しながらplatelet poor plasmaを作成し、ExoQuick ULTRA EV Isolation Kitを用いて細胞外小胞を分離した。Mito-EVsをミトコンドリアマーカーと細胞膜マーカーが共に陽性のものと定義し、Nanosightにおける顕微鏡化目視と、フローサイトメトリーによる定量を健常マウスの血漿及び、43℃50分ドライバスで加温した検体で行なった。 健常マウスより作成した血漿中のEVsサンプルにおいて、ミトコンドリアマーカー陽性のparticlesの存在がNanosight(488nmレーザー)で確認できた。フローサイトメトリーでは200~900nmの比較的大きなparticles分画にcf-Mitoが確認され、加温検体では平均蛍光強度が低下しておりcf-Mitoの性状変化が確認された。
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