鈍的外傷では、その外力により実質臓器や筋肉、骨が損傷される。臨床現場では、搬入時の採血結果で、その組織/細胞損傷を反映して、ASTやALT、LDH、CKなどの逸脱酵素の上昇を認める。つまり、損傷された実質臓器の細胞内に存在する物質が外傷の受傷直後に血液中に放出されている。また、血小板由来のMicroperticles(MPs)のように血小板や白血球などの血球系細胞からの凝固活性化因子の放出に関しては、外傷による物理的破壊によって放出されているとは考え難い。あくまでも各細胞が“活性化”されて放出されていると推測される。細胞が活性化されるには、それなりの時間経過が必要なはずである。逆に、損傷された実質臓器の細胞由来の物であれば、細胞の活性化ではなく物理的破壊なので、受傷直後から周囲に播種されると推測される。ゆえに、受傷直後に血液中に認める凝固活性化因子の大半は損傷された実質臓器の細胞由来の物ではないかと、推測するに至った。 本研究では、鈍的外傷ラットモデルを用いて、受傷直後から放出されてくるMPsや各種damage-associated molecular pattern(DAMPs)と骨格筋からの逸脱酵素がきれいに相関することを明示した。また、同モデルで外傷の重症度を定量的に増加させた場合、その重症度に比例してMPs、DAMPs、骨格筋からの逸脱酵素が増加することも確認している。 さらには、脳、肺、肝臓、骨格筋、脾臓、腎臓の鈍的外力による細胞破壊からの凝固活性化能を評価するため、各臓器をホモジナイズして評価した。MPsとしての凝固活性化能に関しては、大きな差は認めなかったが、tissue-type plasminogen activator (tPA)としての線溶亢進能は、肺が他の臓器と比較して著しく高値であった。
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