研究実績の概要 |
出血性ショックの蘇生で用いられるResuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta (REBOA) は動脈性出血の制御と中枢臓器灌流維持が期待される一方,遠位臓器虚血や虚血再灌流障害 (Ischemia-reperfusion injury, IRI)といった合併症を来しうる. REBOAによるIRIの有効な治療についての検証はない. 類似病態として,敗血症や急性下肢動脈閉塞などサイトカインストームを伴う病態では血液浄化療法が病態改善に寄与する治療法として確立されている.Post-REBOA IRIにおいても同様の病態が存在する可能性が高く,血液浄化療法を用いたPost-REBOA IRIの制御法確立が本研究の目的である. 生体ブタを瀉血により出血性ショックとし,REBOAによる大動脈遮断を90分間行うことでREBOAによるIRIモデルとした. これに対して血液浄化療法を行った血液浄化療法群4頭と行わなかったコントロール群4頭で,生存率やpH,カリウム値,IL-6などのサイトカインといったバイオマーカーの推移,腸管の病理学的変化を検討した.その結果,生存率は血液浄化療法群50%,コントロール群25%と血液浄化療法の生存率が高い傾向を認め,pHやカリウム値,サイトカイン値は血液浄化療法群が低い傾向を認めた.また腸管の病理学的検討では血液浄化療法群のダメージが比較的軽度であった.これらは統計学的有意差を認めなかったものの,血液浄化療法が代謝性アシドーシスや高カリウム血症,高サイトカイン血症を制御し,腸管ダメージを軽減することで生存率を改善させる可能性を示唆する結果であった. 現在上記結果をまとめ,学術誌に論文投稿中,The 47th Annual Conference On Shockにて学会発表予定である.
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