研究課題/領域番号 |
21K09042
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
中島 芳樹 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00252198)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 敗血症 / シンデカン1 / 血管内皮グリコカリックス / blood brain barrier |
研究実績の概要 |
敗血症は死亡率がいまだに高く有効な治療法が待たれる疾患である。敗血症の症状に敗血症関連脳症があり、神経に対する炎症や血管内皮障害による脳の浮腫による可能性が指摘されているがメカニズムはよくわかっておらず予後にも影響することからその解明は重要な問題である。血管内皮glycocalyx(EGCX)は臓器血管によりその密度や厚さに違いがあるが、最も緻密なものは脳に認められ、血液脳関門(blood-brain bar rier, BBB)を形成する。今回の研究ではBBBを構成する脳EGCXが敗血症においてどのような変化をきたしているのか、またその病態において脳内の水分量に大きな変化があるのかを実証したい。具体的には LPS(リポ多糖類)投与による敗血症性ショックモデルにおいてシンデカン-1ノックアウトラットでどのように血管内皮傷害が発生するのか、また違いが血管透過性の亢進などに影響するのかを検証する。 1. シンデカン-1ノックアウトラットで脳血管内皮におけるEGCXの状態を電子顕微鏡で調べる。 2. 血管透過性への影響を Evance blueを用いたin vivoでの観察を行い、MRI画像と実際の組織への水の含有量を測定することで血管透過性と脳浮腫を評価する。 3. 動物実験や臨床データからEGCXの保護作用が示唆される薬物(ヘパラン硫酸およびデルマタン硫酸)投与による EGCX に対する血管修復効果を検証する。 LPS投与による臓器障害、組織像(電子顕微鏡によるEGCXの脱落の程度)を明らかにした上で炎症の活性化、組織損傷の程度を評価しシンデカン-1ノックアウトによる影響を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vivoエレクトロポレーション法(GONAD法)によるシンデカン1遺伝子のノックアウトラットを作製した。 SD系統およびF344 系統ラットを用い、交配させて、プラグを確認した日の夕方に、卵管膨大部にCAS9タンパク、Pank4遺伝子に対するガイドRNAを注入する。注入後、エレクトロポレーション法により欄干膨大部に電気刺激を与えて、受精卵内にCAS9タンパク等を導入させ、ノックアウトラットを得る。 上記の手順でノックアウトラットを作製したが、PCRではノックアウトされていることが確認できているがノックアウトされているはずのシンデカン1の発現が少量認められるため昨年末から再度作成しており、この作業で実験が遅れている。現在再度タンパクの発現を確認する作業に入ったため、今後実験を再開したい。
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今後の研究の推進方策 |
敗血症性脳症における血管内皮グリコカリックスの傷害とそれに伴う脳障害のメカニズムを解明するための研究である。具体的には LPS(リポ多糖類)投与による敗血症性ショックモデルにおいてシンデカン-1ノックアウトラットでどのように血管内皮傷害が発生するのか、またシンデカンの発現異常が血管透過性の亢進などに影響するのかを検証する。 1. 脳血管におけるEGCXを観察する。正常な場合の脳血管と炎症(エンドトキシン投与による)を起こした動物での脳血管内皮の電子顕微鏡で観察し、非常に豊富に存在する脳血管内皮でもsheddingが起きているかを検証する 2. 血管透過性への影響を Evance blueなどの色素を用いた in vivo での観察を行い、MRI 画像と実際の組織への水の含有量を測定することで血管透過性と脳浮腫を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノックアウトラットの確立が非常に困難で物品費に多大な費用が生じたため
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