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2023 年度 実施状況報告書

SARS-CoV-2によるヒト血小板機能活性化メカニズムの解明と治療法の探索

研究課題

研究課題/領域番号 21K09044
研究機関京都大学

研究代表者

川本 修司  京都大学, 医学研究科, 病院講師 (80766668)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワードSARS-CoV-2 / スパイク蛋白 / 血小板 / COVID-19血栓症 / 変異株
研究実績の概要

血栓症はCOVID-19の重症度と死亡率に関連している。SARS-CoV-2はスパイク蛋白を介して宿主に感染する。しかし、SARS-CoV-2変異株由来のスパイク蛋白が血小板活性と凝固能に及ぼす直接的な影響は検討されていない。これまで我々はSARS-CoV-2変異株であるα、β、γ、δ株由来のスパイク蛋白を用いて、血小板機能への影響を解析してきた。結果、これらの変異株間でアデノシン二リン酸、コラーゲン、SFLLRN刺激下での血小板凝集能に有意差はなかった。 また、P-セレクチンの発現およびPAC-1結合は、無刺激条件下でもSFLLRN刺激下でも有意差はなく、血小板数、MPVおよびTEGパラメータにも有意差はないことを示し、論文として報告した(Clin Exp Med 23, 3701-3708 (2023). https://doi.org/10.1007/s10238-023-01091-4)。

現在は独占的に流行している変異株であるオミクロン株由来のスパイク蛋白(B.1.1.529)を用いて血小板機能への影響について解析を行なっている。野生株由来スパイク蛋白またはB.1.1.529由来スパイク蛋白をin vitroで5分間血液と反応させ、血小板へのスパイク蛋白の結合、血小板凝集能、P-セレクチン発現を評価した。結果、B.1.1.529由来スパイク蛋白は血小板へ結合するものの、野生株由来スパイク蛋白に比べるとその結合は少なかった。それにもかかわらず、B.1.1.529由来スパイク蛋白の血小板凝集能亢進作用とP-セレクチン発現で評価される血小板活性化作用は野生株由来スパイク蛋白と同等であった。本内容は2024年5月に欧州麻酔集中治療学会(ESAIC)で発表予定であり、現在論文化を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

COVID-19の主要変異株(α、β、γ、δ株)由来スパイク蛋白を健常者血液に添加しても、血小板活性や凝固能に影響を与えず、かつ株間でも差を認めなかったことを示すことができ、論文として報告できた。現在は変異株であるオミクロン株由来のスパイク蛋白を用いて血小板機能への影響について解析を行い、結果を学会発表し論文化している最中である。予定していた実験は終了し、結果を取りまとめる段階まで進むことができているため、概ね順調に進展しているとした。

今後の研究の推進方策

B.1.1.529由来スパイク蛋白は血小板へ結合するものの、野生株由来スパイク蛋白に比べるとその結合は少ないにも関わらず、B.1.1.529由来スパイクタンパクの血小板凝集能亢進作用とP-セレクチン発現で評価される血小板活性化作用は野生株由来スパイクタンパクと同等であった。この背景に存在するメカニズムの解明に取り組みたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

昨年度、我々はCOVID-19の主要変異株由来のスパイク蛋白を健常者血液に添加して血小板機能に与える影響を調査した。これらの研究結果から、これらの変異株が血小板機能に有意な影響を与えないことを示すことができ、論文としての報告を行った。現在はオミクロン株由来スパイク蛋白の影響を解析しており、その研究も終盤に差し掛かっている。
この研究進行が順調で、大きなトラブルや追加費用が発生しなかったため、科研費の一部が未使用のままとなっている。具体的には、予定していた実験試薬等の一部が低コストで調達できたこと、論文投稿におけるAPCが必要なかったこと、コロナ禍で予定していた国内外の学会参加がオンライン化されたことによる旅費の節約が大きな要因である。
未使用分についてはまず、新たな変異株の出現に備え、これらのスパイク蛋白が血小板機能に及ぼす影響を調査するための追加研究を行う。これには、新たに必要となる追加試薬の調達が含まれる。また、これまでの成果を広く共有し、国際的なコラボレーションを促進するために、国内外の学会での発表を予定しており、その為の旅費や参加費にも充当する。
このように、未使用の科研費は、現在進行中の研究をさらに深め、広範な学術交流を促進するための有効な手段として活用される予定である。これにより、COVID-19に関連する血液学の分野での我々の研究が、より一層の影響を与えることが期待される。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (10件)

  • [雑誌論文] Variant-derived SARS-CoV-2 spike protein does not directly cause platelet activation or hypercoagulability2023

    • 著者名/発表者名
      Kusudo Eriko、Murata Yutaka、Kawamoto Shuji、Egi Moritoki
    • 雑誌名

      Clinical and Experimental Medicine

      巻: 23 ページ: 3701~3708

    • DOI

      10.1007/s10238-023-01091-4

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 経皮的大動脈弁留置術における自己大動脈弁前拡張時に生じたstuck valveにより急性心原性肺水腫を生じた1症例2023

    • 著者名/発表者名
      井手山理湖、山田瑠美子、川本修司、江木盛時
    • 雑誌名

      麻酔

      巻: 72 ページ: 748-753

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 抗血栓療法(抗血小板・抗凝固)中の患者における凝固障害2023

    • 著者名/発表者名
      川本修司
    • 雑誌名

      ICUとCCU

      巻: 47 ページ: 671-678

    • 査読あり
  • [学会発表] COVID-19再燃が疑われた免疫抑制薬使用患者の1例2023

    • 著者名/発表者名
      辰巳健一郎、廣津聡子、武田親宗、瀬尾英哉、川本修司、甲斐慎一、溝田敏幸、江木盛時
    • 学会等名
      第50回日本集中治療医学会学術集会
  • [学会発表] 食道切除術後の皮下気腫増大にhigh-flow nasal cannula療法の影響が疑われた一例2023

    • 著者名/発表者名
      南迫一請、松本承大、松川志乃、川本修司、甲斐慎一、江木盛時
    • 学会等名
      第50回日本集中治療医学会学術集会
  • [学会発表] 血液粘弾性検査を用いた中・高難度肝切除術における希釈式自己血輸血の血液凝固能に対する影響の評価2023

    • 著者名/発表者名
      川本修司、武田親宗、楠戸絵梨子、松本承大、村田裕、江木盛時
    • 学会等名
      日本麻酔科学会 第70回学術集会
  • [学会発表] SARS-CoV-2変異株由来スパイクタンパクは血小板活性化や過凝固を直接的に起こすか?―前向き観察研究2023

    • 著者名/発表者名
      楠戸絵梨子、川本修司、村田裕、江木盛時
    • 学会等名
      日本麻酔科学会 第70回学術集会
  • [学会発表] 冷蔵保存vs室温保存:希釈式自己血輸血の血小板機能にとって最適な保存温度は?2023

    • 著者名/発表者名
      楠戸絵梨子、川本修司、松本承大、村田裕、江木盛時
    • 学会等名
      日本麻酔科学会 第70回学術集会
  • [学会発表] 重症COVID-19罹患後に関節リウマチと診断された全身関節痛の一例2023

    • 著者名/発表者名
      川本修司、廣津聡子、井手山理湖、高橋和代、島田覚生、加藤果林、 池浦麻紀子、瀬尾英哉、江木盛時
    • 学会等名
      日本ペインクリニック学会 第57回学術集会
  • [学会発表] ペンタゾシン長期使用中に重症成長ホルモン分泌不全を発症した一症例2023

    • 著者名/発表者名
      宮尾真理子、加藤果林、廣津聡子、瀬尾英哉、川本修司、池浦麻紀子、江木盛時
    • 学会等名
      日本ペインクリニック学会 第57回学術集会
  • [学会発表] 大血管間を走行する右冠動脈起始部異常で生じた心筋虚血患者に対する冠動脈再建術の麻酔経験2023

    • 著者名/発表者名
      葛野力、川本修司、辰巳健一郎、松川志乃、武田親宗、江木盛時
    • 学会等名
      日本心臓血管麻酔学会 第28回学術集会
  • [学会発表] 本態性血小板血症患者の包括的止血能をThromboelastography(TEG®6s)を用いて評価した2症例2023

    • 著者名/発表者名
      千綿洋平、松本承大、廣津聡子、武田親宗、楠戸絵梨子、川本修司、江木盛時
    • 学会等名
      日本心臓血管麻酔学会 第28回学術集会
  • [学会発表] トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合錠使用中に幻覚の副作用が生じた1症例2023

    • 著者名/発表者名
      相原真琴、川本修司、宮尾真理子、加藤果林、池浦麻紀子、廣津聡子、江木盛時
    • 学会等名
      日本ペインクリニック学会 第4回関西支部学術集会

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公開日: 2024-12-25  

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