研究課題/領域番号 |
21K09046
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
酒井 智彦 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (50456985)
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研究分担者 |
松原 庸博 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70747154)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 医療情報 / 救急タグ / 救急活動記録 / 既往歴 / 避難所開設 / NFC版救急タグ |
研究実績の概要 |
研究1)救急搬送時の傷病者の病歴把握の実態に関する研究として、豊中市消防局の協力を得て、1年分の救急活動記録の集計を行い、救急活動中に傷病者の既往歴を把握できた割合が72%であることを示した。一方で、アレルギー歴、内服薬情報については、それぞれ、テキスト情報の記録の解析により、0.3%、2%の記録しかないことから、救急活動記録の後ろ向き調査では救急隊が活動中に行った情報収集について正しく記録が残せていないことが示唆された。本調査により、豊中市消防局と調整を行い、2022年1月より、アレルギー歴、内服情報についてコードで記録できるように救急隊活動記録の様式を一部修正していただき、前向き調査を行える体制を構築した。前向き調査の体制の構築は、救急隊が限られた時間の中でどれだけの頻度で既往歴、アレルギー歴、内服情報を聴取出来ているのかを明らかにするために非常に重要な取組である。 研究2)避難所開設時における救急タグ情報の有用性に関する研究として、救急タグの配付実績がある東淀川区において、2021年中に行われた避難所開設訓練に2回参加し、参加した市民に対して合計82名に対して救急タグを配付するとともに、避難所における避難者の医療情報の集約化の重要性について市民に説明を行った。大阪府豊能町が救急タグの配付を行っていることを把握し、災害時の救急タグの活用について役場の関係者と協議を行い、共同研究の体制を構築した。 近距離無線通信(near field communication: NFC)のシステムを用いて避難所の受付等で情報収集するシステムの開発に先立ち、必要な項目をNFCチップに登録するためのアプリケーションを研究グループとして独自に作成した。NFC版救急タグを研究グループで融通出来る形にしたことは、今後の避難所での集計管理システムを構築するにあたり非常に重要なポイントである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究1)救急搬送時の傷病者の病歴把握の実態に関する研究については、豊中市消防局との協力体制により、救急活動記録の後ろ向き調査のデータ提供を受けており、さらに前向き調査についても2022年1月から開始出来ている。そのため、当初の予定通りの令和4年度中の後ろ向きの解析の準備、前向きのデータ収集が行えており、概ね順調である。 研究2)避難所開設時における救急タグ情報の有用性に関する研究については、避難所開設訓練がコロナ禍を理由に中止となる地域があり、東淀川区内において十分な周知ができなかった。一方で、大阪府豊能町が救急タグの配付に積極的に取り組まれていることを把握し、災害時の救急タグの活用についても連携していく体制がとれたことは大きなポイントである。 しかしながら、NFC版救急タグの運用について避難所での集計管理システムを作成するにあたり、新規にNFC版救急タグを作成する必要性が明らかとなったため、令和3年度はNFC版救急タグのプログラム作成を行うことに従事し、集計管理システムの作成が令和4年度にずれ込んでしまったことは研究遂行に予期していなかった遅れである。
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今後の研究の推進方策 |
研究1)救急搬送時の傷病者の病歴把握の実態に関する研究については、令和4年度中に、後ろ向きの解析、前向きのデータ収集を行い、令和5年度に前向き調査の解析、報告が行える予定である。これにより、多忙な救急活動において、救急隊がスムーズに活動出来るため、さらには、傷病者となり得る市民が救急隊のサービスを十分に受けるために、医療情報を携帯する取組が有用であることを示すことができると考えられる。 その有用性を広く説明することで、医療情報の携帯に取り組む地域、市民が増えることが期待され、救急隊の活動もよりスムーズとなり、恩恵を受ける市民も増えると考えられる。 研究2)避難所開設時における救急タグ情報の有用性に関する研究については、東淀川区に加え、大阪府豊能町が対象のエリアとなったことから、広い地域で避難所訓練に参加することに繋がり、NFC版救急タグを用いた避難所での集計管理システムの評価を検証する体制が構築できつつある。避難所アプリの開発担当者とも共同研究契約を結ぶ準備を進めており、研究グループ内で速やかなブラッシュアップが進む体制の構築を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
救急タグの集計管理システム開発について、開発がNFC版救急タグの登録アプリ作成が必要となり、集計管理システムの開発が次年度に繰り越しとなったため、謝金に計上していた費用の支出が不要となったため、繰り越しとなった。2022年度には、予定していた改修費に先立ち,集計管理システムの作成にあてる予定である。 救急タグ配布イベントにおける配付協力者への謝金計上についても、コロナ禍におけるイベントの縮小により、避難所訓練の1回毎の参加者が縮小したため、配付協力者を募らなくても良い状況となったため、謝金の支出が不要となった。集計管理システムの開発後のイベント(避難所開設訓練)において、今後も救急タグを配付予定であるため、2022年度の支出に繰り越す予定である。
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