研究実績の概要 |
今年度は、既存の症例において、発症(=神経症状出現)からの経過時刻を記録した臨床データベースを用いて、発症から48時間以内の採取時刻が特定できた血清を用いてサイトカインの測定を行った。今年度の補助金は主にこのサイトカイン測定費用が充てられた。 対象はけいれん重積型急性脳症(AESD)4例、熱性けいれん(FS)21例。FSは有熱性のけいれん発作を認めるも後遺症なしの症例であった。測定はBio-Plexマルチプレックスイムノアッセイ法で行った。 一部のサイトカインについて結果を示す(単位は全て中央値pg/mL)。発症後0~24時間以内の検体(AESD群3例(6検体)、FS群20例(29検体))において、抗炎症性サイトカインであるIL-1Ra(AESD群 : 30486, FS群 : 3209)、IL-10(AESD群 : 85, FS群 : 21)はFSと比較してAESD群において有意に高値であった。炎症性サイトカインであるIL-1β(AESD群 : 5.1, FS群 : 1.3)とIL-6(AESD群 : 134, FS群 : 17)では明らかな違いを認めなかった。 発症後0~48時間以内の検体(AESD群4例(10検体)、FS群20例(30検体))では、抗炎症性サイトカインIL-1Ra(AESD群 : 4162, FS群 : 3388)、IL-10(AESD群 : 39, FS群 : 19)、炎症性サイトカイン IL-1β(AESD群 : 1.1, FS群 : 1.3)とIL-6(AESD群 : 18, FS群 : 18)といずれのサイトカインにおいても明らかな違いを認めなかった。 炎症性サイトカイン、抗炎症性サイトカインいずれも発症24時間以内にピークを認め、抗炎症性サイトカインにおいてのみAESDとFSの違いが捉えられることが示唆された。 またAESDとFSの発症初期の脳波を取得し解析を開始した。
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