研究実績の概要 |
昨年度はAESDと熱性けいれん(FS)の炎症性サイトカイン、抗炎症性サイトカインいずれも発症24時間以内にピークを認め、抗炎症性サイトカインにおいてのみAESDとFSの違いが捉えられることを示した。それは両疾患において、発症時にはすでに炎症性サイトカインは上昇しており、その後は抗炎症性サイトカインのみ変化するフェーズであることを示すのか? 今年度は熱性けいれん(FS)におけるけいれん持続時間とけいれん発症からの時間経過に伴うサイトカインの発症6時間までの変化を調べた。 対象患者は17例。年齢[中央値(最小値, 最大値)]は27ヶ月(10, 104)。けいれん持続時間は7分(1, 215)。けいれん発症から検体採取までの時間は86分(8, 297)。IL-1β値は、けいれん持続時間と有意な正の相関を示し (r=0.615, p<0.01)、けいれん発症から検体採取までの時間とも有意な正の相関を示した (r=0.575, p=0.02)。IL-1Ra値は、けいれん持続時間(r=0.236, p=0.36)とけいれん発症から検体採取までの時間(r=0.279, p=0.28)においてともに相関を認めなかった。またけいれん発症6時間以内に、発熱患者(昨年度のデータより806pg/ml)より高値である1500pg/ml以上を示す症例が多かった。 また脳波データの蓄積を行った。AESDでは非けいれん性てんかん重積状態(NCSE)をきたす症例が多いことから、これを早期に発見することでAESDを予防できる可能性がある。今年度NCSEを機械学習させ自動検出を試みた。これまでのところ機械学習による発作波の識別精度は56%であり精度改善の余地があると考えた。 脳血流の測定については超音波、NIRSによる測定を試みているが、今のところ再現性の良いデータは得られていない。
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