研究実績の概要 |
敗血症は未だ致命率の高い病態の一つである. 網羅的な遺伝子多型解析により, 細胞外マトリックスタンパク質SVEP1が敗血症重症化因子として同定された. SVEP1は細胞間接着や胎生期のリンパ管形成に重要な機能を果たすことが明らかとなってきたが, 未だ機能の全容は解明されておらず, 敗血症における動態や機能はほとんど解明されていない. 本研究では敗血症におけるSVEP1の動的変化を明らかにすることを目的とした. 野生型C57BL/6マウスを用い, コントロールである手術なしモデル(no surgery: N.S.), 単開腹モデル(Sham), 腹腔内敗血症モデル(盲腸結紮穿孔, cecal ligation and puncture: CLP)の各群における, 肺でのSVEP1の遺伝子発現(qRT-PCR法)やタンパク質量(Western-blot法), 細胞ごとのSVEP1の動的変化(Flowcytometry)を比較した. 結果, 敗血症により, 肺でのSVEP1遺伝子発現やタンパク質量が減少することが明らかとなった. また, 肺において敗血症の早期に, SVEP1を有する血管内皮細胞やリンパ管内皮細胞が減少し, SVEP1を有する血球系細胞が増加しすることが明らかとなった. これらの結果から, SVEP1の動態を評価する上で, 肺の血管内皮細胞やリンパ管内皮細胞がターゲットになると考えられた. SVEP1遺伝子多型マウスを用いて敗血症における肺の血管内皮細胞・リンパ管内皮細胞での各種mediatorの動態を評価するために, SVEP1遺伝子多型マウス(SNPマウス)をCrispr-Cas9法で作成し, 現在繁殖中である.
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今後の研究の推進方策 |
SVEP1遺伝子多型マウス(SNPマウス)の繁殖をすすめ, 実験可能な個体数を確保する. SNPマウスおよびWild typeマウスに対し敗血症刺激を加える(盲腸結紮穿孔モデル:CLP, もしくは腹腔内糞便注入モデル). 敗血症刺激後の両群において, Survival study, 血管透過性評価, 血中および組織中の各種mediatorsの測定を行う. 本過程により, SVEP1が敗血症の病態において生体で果たす役割が明らかにできると考える.
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次年度使用額が生じた理由 |
SVEP1遺伝子多型マウス(SNPマウス)に対する敗血症刺激と, その後の各種mediatorの測定などの実験を予定しており, 資機材や試薬の購入のために予算を確保していた。しかし繁殖に難渋し実験が計画通り進まなかったため, 予算を繰り越すこととなった. 2022年度は, 繁殖の目処が立ったことから, 実際の資機材や試薬を使用した実験を予定しており, 資機材や試薬の確保のために繰り越した予算を使用することを計画している.
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