研究実績の概要 |
SVEP1はリンパ管新生に関与する細胞外マトリックスタンパク質である. 網羅的な遺伝子多型解析によりSVEP1が敗血症重症化因子であることが同定されたが, SVEP1の敗血症における動態や機能は未だほとんど解明されていない. 本研究では, 敗血症におけるSVEP1の機能を明らかにすることを目的とした. SVEP1の遺伝子型の異なるモデルとして, SVEP1ヘテロノックアウトマウスを準備した. またSVEP1遺伝子多型(Gln581His)ホモマウス, SVEP1遺伝子多型(Gln581His)ヘテロマウスを作成した. 敗血症刺激の方法として, 腹腔内糞便注入モデル(糞便濃度 100 μg/mL, 体重あたり0.8 mg/g で腹腔内投与), 野生型マウスで7日間生存が50 %, となる刺激アッセイ系を確立した. この刺激アッセイ系を用い, 野生型マウスおよびSVEP1ヘテロノックアウトマウスにおける敗血症刺激後の7 日間生存率を比較し, 野生型 50 %に対しSVEP1ヘテロノックアウトマウス 11.1 % (P=0.0037, Log-rank test)と, SVEP1ヘテロノックアウトマウスで有意に死亡率が高いことが示された. 続いて, 敗血症刺激による生体反応の差異や各種mediatorの動態の差異, 肺の血管内皮細胞・リンパ管内皮細胞の応答の差異を, 野生型マウスの刺激なし/敗血症刺激後12時間, SVEP1ヘテロノックアウトマウスの刺激なし/血症刺激後12時間, の4群のマウスを用い比較した. 組織学的評価でSVEP1ヘテロノックアウトマウスではリンパ管形成が未熟である可能性が示唆され, SVEP1ヘテロノックアウトマウスでは野生型に比較して敗血症刺激での肺の浮腫の程度が強い可能性が示唆された.
|